特集
生コン業界の仕事や暮らしに役立つ情報をくわしく。
生コン業界の仕事や暮らしに役立つ情報をくわしく。
2025.04.07
調印した<2025年春闘確認書>を、なごやかな表情で持つ労使代表。
2025年3月26日、大阪市中央区にある一般社団法人西日本建設関連オーナー会(以下、オーナー会)の会議室において、オーナー会と近畿生コン関連協議会(KURS)・関西労供労組協議会(KLWS)との3回目交渉、<2025年春闘>の最終交渉が、労使双方の交渉団代表で協議され、経済要求・制度要求・労使関係・政策要求についてそれぞれが合意。そして当日中に労使代表によって<確認書>の調印を行った。
●最終交渉出席者
【協議会】
<KURS>寺岡正幸議長 本多裕重副議長 岡元貞道事務局長 藤川拓事務局次長 木村敦豪事務局次長
<KLWS>澤永敏弘副議長 白土武裕副議長 山崎文雄幹事
【オーナー会】
菅生行男会長 山田英幸常務理事 大峠勇常務理事 溝尾廣治郎常務理事 久保裕事務局長
今回の春闘は、労使双方にとって難しい交渉となった。というのは、労働者側としては近年の物価高騰による生活費の負担増、そして経営者側は、慢性的な公共事業の減少などを背景とした生コン需要の低迷という事で、労使共に切迫した状況となっているからだ。
そこで労使双方の交渉団は、事前に行われた第2回交渉である3月19日の協議で、双方による活発な意見交換を行い、経済要求・制度要求・労使関係・政策要求全般に関するガイドライン(解決基準)について経営者側の考え方、労働者側の考え方の相違点を出し合い、労使双方の認識を一致させる努力がなされた。その上で最終交渉となる3月26日の最終交渉にむけて、課題解決のための<ガイドライン>を作成。その基準のすり合わせを行ったうえで交渉に臨んだ。もちろん最終交渉においても、経済要求のガイドラインに関する協議に、多くの時間が費やされたことは言うまでもない。
さてここで気になるのが、なぜ具体的な数字ではなく<ガイドライン>なのか、ということではないだろうか。この点については、これまでも説明してきたが、広域協組加盟プラント各社においては、その経営スタイルも規模も働き方も個社によって事情はバラバラだ。したがって内容によっては、全社一律の数字が出せない場合が多い。そこで個社ごとに協議を行うためのガイドラインをつくっている。
次項に、今春闘で決まった<ガイドライン>の概要について少し説明しておく。
労働者側の代表団。
経営者側の代表団。
まずは、最も気になる経済要求についてだ。正規労働者においては、春闘による合意がなされた後、賃金引き上げ・一時金などの交渉が、労使関係のある職場で開始される(労使関係のない職場は<確認書>を基本に経営陣が判断する)。その点について今回は<今般の物価高に鑑みた協議会からの賃上げ要求を正面から受け止め、労使協議し円満解決が図れるよう努力をする>こととした。
また、非正規労働者の日額賃金については、出荷量減少のもとで今期については先送りすることに合意したが、<日額賃金の引き上げは次年度(2026年度)3月末までに日額21,000円以上を目指すことを確認>し、オーナー会と継続協議を行い、次年度までに方向性を出す>ことで確認した。
諸手を挙げて…とはいかないものの、今後の職場での交渉を後押しする<ガイドライン>を作成したことで、<希望ある前進>と言えるのではないだろうか。
制度要求については、年間休日は広域協組のカレンダー通りとし、<稼働日240日・休日125日とし週休二日制>を確認した。休日については、仕事の状況やプラントの事情などもあるため、やむを得ず出勤となる場合もあるが、その際もこれが決まっていることで、休日出勤手当や時間外手当などのかたちでカバーされる。
そして人員補充及び定年制・雇用継続については、<60歳以降の雇用継続にあたっては雇用継続を理由とする賃金の切り下げは行わないように努力する。また65歳以降の労働者で身体の状況や就業の適正に問題がない者については、就業の機会を与えるよう努力する>ことを確認。
日々雇用労働者の処遇改善では、誘導員の安全確保のため<300㎥以上(の打設の場合)は2名以上の誘導員を確保するよう努力する>こと。さらに熱中症対策としては<7月~9月の3カ月の期間、誘導員に対し、午前中及び午後に各々15分から30分のクーンリグタイムを設ける>など誘導員の安全対策について、万全の対策を講じることを確認。
また政策要求では、<生コン乗務員の安全講習及び新人研修等々の開催にあたっては、オーナー会と、必要に応じてその都度協議し助成措置を含めて積極的に対応していくこと>を確認。
労使関係問題に関しては、<一部労組・その他団体の業界混乱に繋がる蛮行(反社会的行動等)を許さず、業界の発展の一翼を担うことを労使の共通認識として目指すこと>を、改めて確認した。
詳しくは、次項文末のリンクから<2025年春闘確認書全文>を参照してほしい。
そして今回から、確認書の巻末に、若年労働者の新規採用促進を図るため<モデル賃金表>や、広域協組の<年間カレンダー>が掲載されたことも、特筆に値する<前進>だ。
今春闘では、要求交渉の内容以外に、大きく前進したポイントが2つある。
ひとつは<確認書>表紙の署名捺印欄についてだ。これまでオーナー会とKURSの各代表ニ者の署名捺印だったのが、今回からKLWSの松居順一郎議長の署名捺印が加わり、<確認書>が、オーナー会・KURS・KLWSの代表三者での合意・調印であることがより明確となった。
もうひとつは、その署名捺印欄の下に、<加盟全11団体>が名を連ねたことだ。これにより、11団体がオーナー会と集団的労使関係を締結している労組であることが明確となり、またこの11団体が高い意識と自覚を持って、オーナー会と共に<業界発展>を目指すパートナーである事も、改めて強調するかたちとなった。プラント各社及び輸送専業者との交渉の際にも、力強い後押しとなってくれるに違いない。
今春闘は、労使共に難しい交渉となったが、前向きな結果であることに変わりはない。最後にKURS・KLWSとオーナー会は、春闘解決後も必要に応じて協議を継続していくことを確認した。
労使代表者による署名捺印。
労使代表者が調印した<2025年春闘確認書>の表紙。今春闘より、オーナー会・KURS・KLWSの三者による署名捺印と、加盟全11団体の名称が明記されている。