建物探訪
関西の名建築を訪ねて、モチベーションアップ。
関西の名建築を訪ねて、モチベーションアップ。
2019.06.17
淀川越しに梅田方面を眺めると、高層ビル群の中にひときわ目立つビルがあります。それが梅田スカイビル。
大阪駅にほど近い新梅田シティに建ち、150m越えの二棟の超高層ビルを円形の空中庭園でつなぐ独特の外観。
地上173mから大阪の街を一望でき、25年以上、梅田のランドマークとして、大阪市民だけでなく多くの人々に親しまれています(写真提供/積水ハウス梅田オペレーション株式会社)。
梅田スカイビルは、京都駅ビル(1997年)や札幌ドーム(2001年)の設計者として知られる原広司氏により設計され、1993年3月に完成しました。
外装の大部分を占めるガラスカーテンウォールに空が映り込み、見る時刻や角度によって、印象が変わる姿は、明らかに周囲の高層ビルと一線を画しています。その異形は日本だけにとどまらず、世界にも伝えられました。
2008年、英紙「THE TIMES」で「世界の建築TOP20」の一つとして、国内で唯一選ばれました。「世界の建築TOP20」では、アテネのパルテノン神殿やローマのコロッセオ、インドのタージ・マハルなど、歴史的に貴重な建造物が選ばれる傾向が高いだけに、その中で選出されることは異例と言えます。
これをきっかけに海外での人気に火がつき、今ではインターネットやSNSの口コミで訪れる外国人も急増するまでになりました。
大阪駅の北西にある旧梅田貨物駅の西側には、ダイハツディーゼルの本社・工場や東芝関西支社などがありましたが、にぎわう大阪駅付近に比べて寂れた工場地帯となっていました。そこで、これら周辺地域の再開発の一環として、新梅田シティの建設が計画され、1990年2月に着工、1993年春に完成したのです。
バブル景気時代に計画され、完成時には、ちょうどバブルがはじけるという奇跡的なタイミングで、少しでも計画が遅れれば、建設は叶わなかったかもしれません。
新梅田シティは、「梅田スカイビル」「ウェスティンホテル大阪」「昭和レトロ商店街・滝見小路」、「空中庭園展望台」などで構成される大規模複合施設です。タワーイースト、タワーウエストという二つのビルをつなぐ構造の建設には、安全面・コスト面・工期において、高い課題がありました。この課題を解決すべく考えられたのが「リフトアップ工法」です。空中庭園部分を、安全性の高い地上の作業環境で組み立て、ワイヤーロープで所定の高さまで釣り上げてセットするという工法は、当時、世界初の試みでした。
リフトアップ工法は、この事例の後、東京スカイツリーのアンテナ用鉄塔やナゴヤドームの屋根の施工などでも採用されました。
2017年には、年間来場者数が過去最高の150万人を突破し、その内の7割以上を外国人観光客が占め、今後の更なる集客も期待されています。
2018年、梅田スカイビルは、その開業25周年を記念して、シンボルである空中庭園展望台を全面改装しました。超高層ビルの展望台としては珍しく屋上に設置され、360度の視界と全天の風を感じながら眺められる特長を生かし、景色と展示物をより楽しめるギャラリーとしても整備されました。
新梅田シティの建設が計画された当時、周辺地域の活性化だけでなく、国内外を問わず多くの人が訪れる大阪の名所を生み出し、大阪の活性化に寄与することが期待されていました。その夢がここに来て、ようやく実を結ぼうとしています。
高さ173mで人が外に出て、風を体で感じることができるという、この上ない体験は、今後も国内外の人々を魅了し続けるに違いありません。
名称 | 梅田スカイビル(梅田シティ) |
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所在地 | 大阪府大阪市北区大淀中1丁目 |
竣工 | 1993年3月 |
構造 | 鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造) |
高さ | 173m |
階数 | 地上40階・地下2階 |
延床面積 | 147,397m2 |
主用途 | オフィス、商業施設 |
事業主 | 積水ハウス、NREG 東芝不動産、ダイハツディーゼル、梅田シティ、テェルウィンコーポレーション |
設計 | 原広司+ アトリエ・ファイ建築研究所、木村俊彦構造設計事務所、竹中工務店 |
施工 | 竹中工務店、大林組、鹿島建設、青木建設(当時)による共同企業体(JV) |
管理・運営 | 積水ハウス梅田オペレーション |
※出典:積水ハウス「ニュースレター2018年6月27日」より抜粋