[続]偽装労組
偽りの連鎖が、今はじまる。
偽りの連鎖が、今はじまる。
2021.12.27
50年間にわたり、生コン業界のドンとして君臨してきた武建一・全日本建設運輸連帯労働組合(全日建=連帯ユニオン)関西地区生コン支部(大阪市西区、以下関生支部)委員長が、2021年10月10日に開催された<関西支部第57回定期大会>で、委員長を解任されたことを前回報告した。その直後から、武前委員長支持派と新委員長に選出された湯川裕司前副委員長らとの間で激しい対立が続いている。関生支部の機関紙『くさり』(2021年11月10日号)によると、湯川新委員長、細野直也新書記長は、役員選挙で圧倒的多数で信任されたと報じている。ここで言う対立とは、新執行部と、これまで関生支部と行動を共にしてきた労働組合や学者・研究者の一部の間で起きているもの。新執行部は関生支部がこれまで取ってきた闘争路線は踏襲する方針だ。
10月10日の関西支部第57回定期大会後、『くさり』編集部のインタビューに、湯川新委員長は、新執行部発足について、こう答えている(以下、『くさり』2021年11月10日号より)。
「10年先を見据えて世代交代を実行しました。大阪広域生コンクリート協同組合(以下、大阪広域協組)による組合つぶしと権力弾圧は現在も現在も続いています。8件の刑事裁判、解雇や損害賠償などの数多くの民事裁判、20件近い労働委員会、これらを闘い抜きながら運動と組織を再建するには少なくとも5年以上、いや10年はかかるでしょう。その先を見通すなら、次世代の幹部育成は今から始める必要があると考えたからです。
たしかに、勇退された武・前委員長は組織の創設者であり、長年にわたり絶大な功績を残してきた方です。しかし、その存在が大きいため他の役員が受け身になりがちだったり、組合員から自由な発想が生まれにくくなっていたのも事実です。こうした弱点を克服しなければ10年先に通用するような幹部はつくれません。自分の頭で考え、責任をもって組合員をひっぱっていける幹部を、10年経ったそのときになってから育てようとしてもできるはずがありません。武・前委員長には、世代交代した執行部の後ろ盾の役割を果たしてもらおうと話し合ってきました。世代交代の議論そのものは10年以上前から続いてきました。しかし、実行するには今しかありません。それが新執行部の判断でした。
今年7月の中央委員会では、中央委員全員の賛成で「世代交代の決議」を採択。それを受けて9月に告示された新役員選挙には、武・前委員長は立候補せず勇退することをご自身で決められました。組合員全員による直接無記名投票の選挙では新執行部の全員がほぼ満票で信任されたというのが経過です。
私が委員長に就任した定期大会(本年10月10日)以降、「現執行部は大阪広域協組と手を握ろうとしている」というデマや誹謗中傷が発信されています。こうしたデマ・誹謗中傷は利敵行為であり、組織破壊活動だととらえ、そうした活動をただちにやめるよう呼びかけています。関生支部のこれまでの運動方針や路線は執行部・組合員が実践するなかでつくり上げてきたものです。それは言わば組織の重要な「財産」であり、変更することはあり得ません。ありがたいことに、多くの支援共闘団体・支援者の方々から、『新たに確立された執行部を支持する』という力強い声をいただいています。
私たちは「雑音」に惑わされることなく、仲間に再度結集を呼びかけ、新たな関生支部をつくっていきたいと思っています」。
<再生関生支部>宣言と言ってもよいところだが、果たして<再生>なのか。なによりも、湯川新委員長は武前委員長とともに恐喝未遂などで逮捕・起訴された刑事被告人である。延べ100人近い逮捕者を出した、彼らが言うところの<弾圧事件>では、武前委員長に次ぐ、責任者である。<世代交代>と言うなら、自らも責任を取って、武前委員長ともども<勇退>すると言うのがスジだろう。
関生支部の元幹部がことの経過をこう語る。
「支部の組合員はすでに100名を切っている。このままでは先がないと、若手を中心にして執行部の刷新を求める声が昨年から上がっていた。計6回逮捕された武委員長(当時)は2020年5月19日保釈され、次いで計8回逮捕された湯川副委員長(当時)が同年6月1日に保釈されました。それからです。湯川副委員長と武委員長との間で、あるいは武委員長抜きで、湯川副委員長と他の執行部との間で、武委員長引退の話が繰り返されたといいます。武委員長も最終的にはそのことを了承したといわれていました。武委員長に対し、検察側は2021年3月30日、大阪地裁で威力業務妨害、恐喝未遂などで懲役8年を求刑しました。それで、武委員長は、『判決では懲役5年』と覚悟し、収監されたときは、委員長代理として関生支部のOBを人づてに依頼したそうです。しかし、そのOBに断わられたそうです」。
そして、同年7月13日に下された判決は、懲役3年・執行猶予5年と誰もが予想したよりも軽いものだった。
もともと、湯川新委員長は武前委員長の<後継者>と目されていた。そして<勇退>の道筋が引かれていた。言い換えれば<武>包囲網ができあがっていたのである。ところが、同年10月10日の第57回定期大会で<異変>が起こったのだ。関生支部は、大会や先に紹介した湯川新委員長のインタビューで「武委員長ご自身で勇退を決められた」と報じている。しかし実際は、<勇退>と言われるほど穏やかな退任ではなかった。すでにいくつかの文書やインターネット上で、武前委員長は「委員長挨拶発言の途中で中断され、取り囲まれて会場から追い出された」と報じられているのだ。そこで今回この号では、現執行部のいわば<内紛>に対する湯川新委員長の見解を紹介した。また別に新執行部の正式な「見解」も出されている。前回は、「一組合として関生再生に奮闘します」と宣言した武前委員長の<声明文>を紹介したが、次回は、発言の途中と中断されたと言う<武前委員長挨拶>を紹介する。