[続]偽装労組
偽りの連鎖が、今はじまる。
偽りの連鎖が、今はじまる。
2022.09.30
滋賀県内を舞台にした<全日本建設運輸連帯労働組合(連帯ユニオン)関西地区生コン支部>(以下、関生支部)による一連の威力業務妨害事件、恐喝事件で、つい先日(2022年9月13日)、大津地裁において検察側論告求刑公判が開かれ、検察側は湯川裕司被告(現関生支部委員長)に懲役8年など、計6人の被告に懲役刑を求めた。他の5人については、城野正浩被告(執行委員・政策調査部長=事件当時)懲役4年6月、萱原成樹被告(執行委員=事件当時)懲役4年、山本智被告(特別対策係=事件当時)懲役3年6月、中村正晴被告(会計監査=事件当時)懲役2年6月、壱岐健一被告(新京都生コン分会員=事件当時)懲役1年6月である。
対象となったのは、(株)フジタ大阪支店(大阪市)・大和ハウス工業(株)(大阪市)事件、中堅飲料水メーカー・(株)チェリオコーポレーション(京都市)事件、セキスイハイム近畿(株)(大阪市)事件、(株)東横イン電建(東京都)事件、日本建設(株)(大阪市)事件、(株)タイヨー生コン(滋賀県野洲市)事件など、いずれもコンプライアンスに関わる威力業務妨害事件である。これに加えて、湯川被告のタイヨー生コン1,000万円恐喝事件も対象だ。この恐喝事件については、分離裁判となった2021年7月の大阪地裁判決で、武建一被告(当時、関生支部委員長)は無罪となっている。
そこで、本シリーズ(Vol.6)で一部紹介した、湯川現関生支部委員長(当時は関生支部執行委員)と近しい関係にあった元関生支部幹部K氏(以下、K氏)が、2020年10月、中央労働委員会に提出した<陳述書>の内容を、今回、改めて紹介する。
まずK氏のプロフィールを簡単に紹介すると、同氏は京都生コンクリート協同組合(以下、京都協組)の加盟社が製造する生コンを運ぶ、生コン輸送会社、(有)ベストライナ―でミキサー車の運転手をしていた。2001年頃、関生支部に加入し、翌2002年10月、組合員約10人と分会を公然化し、関生支部・ベストライナー分会を立ち上げた。2009年に当時関生支部執行委員だった湯川現委員長が同分会に加入してきたという。K氏は2018年11月、大手住宅メーカー・セキスイハイム近畿に対する威力業務妨害事件で、滋賀県警に他の組合員とともに逮捕、起訴された。このセキスイハイム事件を皮切りに、以降1年間、湯川副委員長(当時)の指揮の下、ターゲットと定めた企業に対して、コンプラ活動と称して、多くの嫌がらせ行為を行い、威力業務妨害、恐喝未遂など5つの事件で起訴され、2020年2月3日、大津地裁で懲役3年執行猶予5年の有罪判決を受けた。K氏は、保釈中の2021年3月に関生支部を脱退したが、2022年9月13日、大津地裁で行われた検察側論告求刑で対象となった事件は、K氏が関わり、有罪判決をうけた事件と重なっている。
さて、そのK氏は、関生支部の組織について詳細に陳述している。
まず、<関生支部>の組織構成と幹部役員(事件当時)について。
➀関生支部には地域毎に京津ブロックなど13のブロックがあり、各ブロックにはその地域にある会社毎に各組合員が所属する分会がある。各ブロックには必ず1名ずつ執行委員がいて、関生支部と各ブロックの連絡調整役をしている。K氏が所属していた京津ブロックは松尾紘輔が執行委員を担当していた。
それ以外に政策調査部、機関紙部や青年女性部、労働者供給事業所である朝日分会や淀川ユニオン(淀川事務所)についてもそれぞれ担当執行委員がいて関生支部と各部署との間の連絡調整をしている。
➁関生支部の本部事務所は大阪市西区川口のユニオン会館内にあり、その2階に武委員長ら幹部の机があった。関生支部の運営や主な活動方針は、毎週数回この本部事務所で開催される常任委員会で決定されることになっていた。平成29(2017)年当時の常任委員会のメンバーは、武委員長をトップに湯川、坂田冬樹、七牟禮時夫、中原克也の各執行副委員長4名、武洋一書記長、武谷新吾書記次長、小路健太郎財務部長に、近畿2府4県の政策運動に関する情報に詳しい城野正浩執行委員(政策調査部担当)を加えた9人だった。
これらの常任委員にはそれぞれ担当が割り当てられていて、例えば、副委員長4名の中でも組織ナンバー2と目されていた湯川副委員長は、京津・奈良ブロック及び争対部・教育部・機関紙部を担当、坂田副委員長は、神戸・播但・三田ブロックを担当していた。関生支部が各ブロックで組合員を動員して争議活動(ストライキと称して出荷妨害・阻止等)を行ったり、街宣車・ビラ頒布等による街宣活動を行う時には、必ず常任委員会で事前に担当常任委員からそれらの計画内容を武委員長に説明し、武委員長から承諾をもらっていた。湯川副委員長はその承諾のことを「決裁」と呼んでいた。また、関生支部として重大な活動は武委員長が自ら企画して各常任委員に活動を指示していたと聞いていたので、関生支部の活動は実質的には全て武委員長の意向次第だったといえる。
次は、本シリーズでもよく出てくる<関生支部の争対部>についてだ。K氏は<陳述書>にこう記している。
➀関生支部は、ストライキと称して大勢の組合員が身体を張って生コン出荷等を妨害・阻止したり、街宣車、ビラ頒布などによる嫌がらせ(街宣活動)を行い、ターゲット会社等に圧力をかけて組合の要求を受け入れさせることを主な活動手段としてきた。これらの活動の中心となってきたのが争対部である。すなわち、争対部のメンバーは、大々的な争議行為等を行う際に現場に動員されて大勢の組合員を指揮したり、現場で前面に出て身体を張って活動する役割を担っている。
また、街宣車で会社や役員の自宅周辺等に押しかけていき、予め作っていたビラを配ったり、大音量でビラの内容を宣伝する活動も行ってきた。関生支部はこのような活動のことを広報宣伝活動と呼んでいるが、相手に対する嫌がらせや圧力をかけることが主目的だから中身は相手の名誉や信用を毀損する内容のものがほとんどだ。さらに、コンプラ活動あるいはコンプラを打つと呼んで、ターゲット会社の工事現場等に出向いていき、現場の仮囲いやコーン、ミキサー車のサイドミラー等が道路に数センチはみ出していたり、現場の出入り口付近の道路が泥で汚れているなど些細な不備を見つけては現場責任者等に繰り返しこれらを是正するよう要求して工事を中断させたり、それが重大なコンプライアンス違反であるかのような内容のビラを作成・頒布して嫌がらせをすることも行ってきた。
このコンプラ活動は、争対部担当の常任委員である湯川副委員長が発案し、その指示を受けた私が最初に行うようになったものです。ターゲット会社に圧力をかける手段として、例えば会社に対する出荷妨害や街宣活動は、威力業務妨害や名誉毀損の罪で警察に逮捕されるリスクが高いのに対し、コンプラ活動は形の上では相手の小さな違反を正す行為なので、警察も直ぐに業務妨害として逮捕することはないだろうと考えた(もっとも、今回滋賀県警に威力業務妨害罪等で逮捕されてしまった)。しかも、コンプラ活動は争議活動とは異なり、相手会社に組合員がいてもいなくても関係なく、ターゲット会社に対して、少人数でも手っ取り早く圧力をかけることができると考えて多様し始めたものだった(次回へ続く)。
次回も引き続き争対部活動、関生支部の特別対策班、通称<特対>について、K氏の<陳述書>を紹介する。