独占連載「偽装労組」
連帯ユニオン関生支部の正体を暴く。
連帯ユニオン関生支部の正体を暴く。
2020.01.16
前回、連帯ユニオン関生支部(以下、関生支部)と武建一委員長が宝島社とフリージャーナリスト・一ノ宮美成氏を相手取り起こした宝島訴訟の一審判決について書いたが、今回は控訴審の東京高裁判決の概略を紹介したい。
判決日は2018年1月31日。原告、被告の請求ともに棄却、60万5,000円の損害賠償額が温存される判決となった。しかし、一審で<半グレ集団>と認定された連帯労組・関生支部について、一歩踏み込んで<反社会的勢力>※1と認定した。一審判決は名誉毀損訴訟の事案の概要について以下のように述べている。
「本件は、労働組合である原告組合及びその執行委員長として原告組合の代表者を務める原告武が、被告一ノ宮において執筆し、雑誌『別冊宝島』―略―に掲載された、原告らについて暴力団と関係があるとの内容を含む記事によって原告らの名誉を毀損されたと主張して、被告一ノ宮及び本件雑誌を発行した被告会社に対し、共同不法行為による損害賠償請求権に基づき、各1,650万円及びこれに対する本件雑誌発行日である平成25年9月29日から支払い済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である」。
要するに宝島訴訟の争点は、連帯労組と武委員長が暴力団と関係があるかどうかだった。
さきに、<反社会的勢力>と東京高裁で認定されたと書いたが、そこに至るまで、高裁判決は暴力団とのかかわりについて、地裁判決が認めなかった事実のいくつかを認めた。一つは、京都の暴力団会津小鉄会との関係である。高裁判決はこう述べている。
「確かに、京都の土木建築業界においては、会津小鉄会がこれを仕切り、工事を受注する業者から、受注金額に応じた一定割合の金員を徴収していたことが、山口組幹部の高山清司の刑事事件の審理において前提とされており、1審原告武が京都を含む関西地域の生コンクリート業界を取りまとめる立場にあったことなどからすると、1審原告らと会津小鉄会が親密な関係にあったとしても、不自然とは言えないように思われる」。
さらに、1審では五代目山建組系三代目山建組内樺山総業の樺山典正総長が関生支部事務所、通称生コン会館から「大金を持ち帰っていた」との被告の主張を認めなかったが、高裁判決では被告の主張をこう認めた。
「本件(関生支部の会計担当者S子さんがつけていた)帳簿は1審原告の会計担当者が作成した裏帳簿とされており、他の資料からうかがわれる資金の動きと符合する記載もあるなど、相応の信用性が認められる。本件帳簿は、その性質上、記載に具体性を欠くことはやむを得ないところ、その記載自体からでも、(平成15年1月)30日までに200万円、同月31日100万円がⅠ審原告組合書記長の武洋一の扱いで山口組山建組系樺山組総長の樺山に流れたことがうかがわれる。
そうすると、樺山が原告組合の会館に来たときに現金を持ち帰ったのかや、原告組合から樺山に対する資金提供が定期的であったかについては不明であるものの、樺山が原告組合の会館に出入りしていたとの亡村上(省一=連帯ユニオン近畿セメント支部委員長)の供述があることも考え併せると、原告が樺山に一定の資金を提供したことについて、1審被告一ノ宮ひいては1審被告会社(宝島社)が真実であると信ずるにつき相当の理由があるということができる」「『原告組合の事務所に山口組系組員が出入りし、定期的に大金を持ち帰ったこと』という事実の重要な部分であると解されるから、この適示事実については相当性が認められる」。
そうして、高裁判決は一審判決が<半グレ集団>と認定したところを一歩踏み込み「原告組合が反社会的な活動を行うことのある集団」と改め、関生支部を<反社会的勢力>と認定した。
高裁判決について、被告宝島社側は、連帯ユニオン関生支部を<反社会的勢力>と認定したこと、名誉毀損の損害賠償額が近年の相場から言えば少なかったことなどから、<実質勝訴>とし、上告しなかった。原告の反社会性を上塗りした高裁判決について、関生支部と武委員長は同判決を不服として最高裁に上告した。
最高裁の判決が出たのは2018年8月23日。原告側の上告を受理せず、棄却との判決だった。これで関生支部は<反社会的勢力>であることが確定した。その5日後の同年8月28日、武委委員長は、滋賀県警に恐喝未遂容疑で逮捕された。
次回からは宝島訴訟であきらかになった関生支部の<偽装労組>の実態をあきらかにしたい。
※1. <反社会的勢力>とは、政府の犯罪対策閣僚会議が決めた「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」(2007年6月19日)で、「暴力・威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人である『反社会的勢力』」と定義された集団である。
◎記事をより読みやすくする目的で、偽装労組Vol.4から、強調の意味での「 」や、新たに登場する会社名については、2回目以降の(株)表記を省略しています。