独占連載「偽装労組」
連帯ユニオン関生支部の正体を暴く。
連帯ユニオン関生支部の正体を暴く。
2020.08.31
前回Vol.22で、今回から2018年12月の関生支部のセメント出荷妨害事件について解明すると予告したが、ストライキに起因した訴訟に関して、新しいニュースが飛び込んできた。連帯系生コン輸送業者が、生コン製造業者を相手に起こした<地位確認>や1億2,503万7,845円余りの損害賠償訴訟の一審判決が、2020年8月21日に大阪地裁であり、原告である連帯系業者の請求は、いずれも理由がないとして棄却され、全面敗訴したのだ。この訴訟の判決内容は、連帯ユニオン関西生コン支部(以降、関生支部)のストライキと称した<出荷妨害行為>を、裁判所がどう評価したのか明快な回答を示しており、今後の刑事訴訟の判決結果にも影響を与える可能性が高い。
今回は、予告していた内容を変更して、このニュースについて解説する。
まず、今回の訴訟の概略について説明したい。
原告は連帯系の<近酸運輸株式会社>(岩本光雄社長、本社・兵庫県尼崎市)、被告は<阪神生コン建材工業株式会社>(上田純也社長、本社・大阪市西成区、大阪工場・神戸工場)。訴訟が提起されたのは2018年9月。裁判の争点は大きく分けて2つ。一つは、両社間の<専属運送委託契約>が<半永久的な>ものであったかどうか。二つ目は、被告が原告との<専属運送委託契約>の更新を、被告が拒絶したことに正当な理由があったかどうか、である。以下、判決文に沿って記述していく。一つ目の<専属運送委託契約>の期間について、そもそも原告と被告は2017年3月7日までに、1年ごとに<専属運送委託契約>を更新する契約書を作成。最終の更新に係る契約期間は、2017年4月1日から2018年3月31日だった。
2017年12月の時点で、原告に雇用されているトラック運転手は約40人で、全員が連帯に加入していた。そこに起こったのが、関生支部のストライキと称した<出荷妨害>だ。
被告は2017年12月11日、原告代表者側から、原告の従業員であるトラック運転手が、同月12日から大規模なストライキを行うため、運送業務を行えないとの連絡をうけたため、和歌山県にある被告の系列会社から、自前のミキサー車を調達して運送に当たらせるか、他の運送業者に委託するという代替手段を講じる旨の返答をした。ところが原告代表者から、もしそのような方法をとったら、連帯の活動の矛先が被告にも向かう可能性があると聞き、代替手段を講じることを断念した。しかし被告は、原告の従業員を雇用しているわけではない。雇用関係がないにもかかわらず、言うことを聞かなければ、連帯の行動の矛先が被告に及ぶ可能性があるなどとは、脅し以外のなにものでもない。
被告は、日本最大の生コンクリート協同組合である<大阪広域生コンクリート協同組合>(木村貴洋理事長、大阪市中央区、組合数164社189工場、年間出荷数量800万㎥=2017年12月現在)の、加盟業者である。大阪広域協組の理事会は2017年12月19日、連帯のストライキは「産業ゼネストと称する威力業務妨害である」として、犯罪行為に対する捜査への協力と責任追及などを決議した。さらに翌2018年1月23日、数社のゼネコン及び販売店から、連帯の組合員を現場に入れないでほしい、という要望を受けたことを踏まえ、連帯との関係が深く、安定供給に不安がある工場は問題(広域協組と連帯との紛争)が解決するまで、割り当てを自粛してもらいたいこと、連帯系の生コン及びセメント輸送会社とは取引をしない方針とすることを決議した(以下、本件意思決定)。広域協組は組合員に対し、同年2月6日付け文書で、本件意思決定の内容を周知し、当面の間、連帯系の業者の使用を極力さし控えるよう依頼した。
こうしたことから、出荷割当ての自粛を余儀なくされた被告は、同年1月27日以降、原告との間で、双方の代表取締役による状況改善のための協議を重ねた。協議の結果、原告と連帯との関係を解消するため、原告の株主構成を変更することにした。当時、原告の株主は、関生支部の<金庫番>と呼ばれている武洋一副委員長が社長をしている<ユニオン共済>で、それも発行済み全株式4万株を所有していた。その全株を原告の代表者に譲渡することになった。これにより、広域協組から割当てを受け、同月12日の出荷分の運送委託を受けたが、その際に、<専属運送委託契約>の契約書を作成することはなかった。
被告は2018年4月25日、原告に、被告代表者が記名押印した協定書を送付し、合意を求めた。協定書は、『2017年3月7日付けの本件専属運送委託契約を合意解約すること、新たに有効期限を1年とする協定を締結し、原告は、被告の工場の指示に従って生コン輸送を行うこと、原告の従業員による被告の営業妨害や広域協組に所属する他の生コン工場の出荷に悪影響となる行動を禁止する』ことなどが記載されていた。しかし、原告は協定書の締結に同意しなかった。
こうしたことから、被告は2018年5月16日付けの書面で、原告に対し、2017年3月7日付けで更新した<専属運送委託契約>及び、これにともない締結した賃貸契約(被告の大阪工場内にある原告の営業所)が、2018年3月31日で期間満了終了すること、またただでさえ原告は、2017年12月12日及び13日に、従業員が、連帯の労働活動に参加することを理由に、輸送業務を履行しなかったという本件専属運送委託契約の不履行があり、信頼関係が破壊されたとして、契約関係の解消を通知していた。これに対して、原告側は「契約は期間の定めのない契約で、半永久的なもの」と主張した。しかし、判決は、「契約書の中に有効期限が明記され、契約満了の一か月前までに契約をしなければならない」と規定が設けられていることから、「期間を1年と定めた上で、契約当事者に契約更新義務を課したものと解するのが相当」として、「半永久的なもの」とする原告の主張を退けた。これまで通り、やりたい放題で、今回もそれが通用すると思っていた関生支部のやり口が、契約行為という<商法>の決まりどおり、それを違反すれば負けるという、あたり前の判決が出たわけである。
次回は、二つ目の争点である<専属運送委託契約>更新拒絶の正当性について、裁判所がどう評価したのかを見ていくことにする。
※記事をより読みやすくする目的で、偽装労組Vol.4から、強調の意味での「 」や、新たに登場する会社名については、2回目以降の(株)表記を省略しています。