独占連載「偽装労組」
連帯ユニオン関生支部の正体を暴く。
連帯ユニオン関生支部の正体を暴く。
2020.09.15
前回、連帯ユニオン関西生コン支部(以下、関生支部)が、2017年12月に起こしたストライキに起因した、連帯系生コン輸送業者が、生コン製造業者を相手取った<地位確認>と、約1億2,500万円の損害賠償訴訟の一審判決(大阪地裁、2020年8月21日)で、連帯系業者が全面敗訴したことをお伝えした。原告は連帯系の<近酸運輸(株)>(兵庫県尼崎市)、被告は<阪神生コン建材工業(株)>(大阪市西成区)である。訴訟の争点は大きく分けて二つ。一つ目は、両社間の<専属運送委託契約>が<半永久的なもの>であったかどうか。2つ目は、被告が原告との<専属運送委託契約>の更新を拒絶したことに正当な理由がどうか、である。このうち第一の争点については、前回レポートした通りである。今回は第二の争点について解明したい。
結論から先に述べると、大阪地裁は、関生支部が2017年12月12日に行った<ストライキ>と称する行動によって、被告が原告との<専属運送委託契約>の更新を拒絶したことには正当性があり、「違法ではない」と判断した。それでは、<ストライキ>を、裁判所はどう評価したのか。判決文はこう明確に判断している。
「団体争議権(ストライキ)は、労働条件の改善を目的として、雇用主に対して行使することが許されるものであり、雇用主の取引先に対して行使することが許されるものではなく、かかる行為は、団体争議権の名を借りた業務妨害行為と言わざるを得ない。証人柳充(関生支部元副委員長)は、平成29年(2017年)12月の<ストライキ>の目的を運賃の底上げにあると証言しているが、本件専属運送委託契約における運賃の交渉は、当事者間で行うべきものであって、契約当事者でない連帯の組合員や原告の従業員が交渉権限を有するものでないから、<ストライキ>の目的が上記証言(柳証言)のとおりであったとしても、業務妨害行為であることには変わりがないということである」。
つまり、連帯労組の<ストライキ>は、<業務妨害行為>と裁判所は断定したのである。こうなると、警察による捜査・逮捕は、<弾圧>などではなく、一般の刑事事件としての<業務妨害>行為を、法律にもとづき<犯罪>として司法権を行使したということになる。要は、「業務妨害を目的にしたストライキ」に過ぎなかったことを、裁判所が認定したのである。この裁判所の判断は、<弾圧事件>と主張する連帯労組の最大の根拠を打ち砕くものだ。
さらに、判決はこうもダメ押ししている。「連帯の組合員による業務妨害行為は、原告の事業として行われたものではないから、法的に原告の行為と評価することはできない。しかし、原告は、連帯が組合員の雇用の確保のために買収した会社であり、平成29年(2017年)12月のストライキの当時、原告の従業員であるトラック運転手約40名が全員連帯の組合員であったことからすれば、被告に生コンの運送委託契約を行い続けると、上記ストライキ後も、連帯の組合員によるストライキ及びこれにともなう業務妨害が行われるおそれが高かったといわざるを得ない。したがって、広域協組(大阪広域生コンクリート協同組合)の本件意思決定は、生コン製造業者の営業に対する妨害を避ける正当な目的によるものであり、被告が意思決定に関与したことが不当であるとは言えない」。
ここでいう広域協組の<本件意思決定>とは、連帯による2017年12月12日以降の、連帯の組合員を雇用している会社と、生コン製造販売会社との間における、運送委託契約の運賃値上げなどを意図して、<ゼネスト>と称する<ストライキ>を行ったことに対する、広域協組の理事会決議のことである。この<運賃値上げ>要求に根拠がなかったことは、後日詳述する。この<ストライキ>がどんなものだったか。判決は具体的な事例を挙げて紹介している。
たとえば「(広域協組の組合員である)中央大阪生コン(大阪市西成区)は、(2017年)12月11日、原告から<ストライキ>の通告を受けた際、自らのグループ会社に運送を委託するから、工事現場に駐車中の原告ミキサー車を撤去してほしいと返答したところ、同日夜から同月12日の朝にかけて、多数の者が中央大阪生コンの敷地に集まり、駐車場のミキサー車が出発できなくなって、警察の出動が要請されるという事態になった。また、連帯の組合員は、<ストライキ>において、大阪府、和歌山県及び兵庫県にある生コンの原料となるセメントの出荷ステーションにおいて、実力で出荷を阻止する行動をとった。
<ストライキ>は、平成30年(2018年)9月18日、連帯の幹部組合員ら16名が威力業務妨害、恐喝未遂の被疑事実により逮捕され、うち7名が起訴され、16名のうち5名が再逮捕されたほか、新たに3名の組合員が逮捕される事態に発展した」。
判決がその実態をあきらかにした通り、<ストライキ>に対して、広域協組の理事会は、平成29年(2017年)12月19日、連帯による<ストライキ>は、産業ゼネストと称する威力業務妨害であるとして、犯罪行為に対する捜査への協力と、責任追及をするなどを内容とする決議を行った。さらに同協組理事会は、平成30年(2018年)1月23日、数社のゼネコン及び販売店から、連帯の組合員を現場に入れないでほしいという要望を受けたことを踏まえ、連帯との関与が深く、安定供給に不安がある工場は問題(広域協組と連帯の紛争)が解決するまで、割り当てを自粛してもらいたいこと、連帯系の生コン及びセメント輸送会社との取引をしない方針とすることを決議した。説明が長くなったが、これが広域協組の<本件意思決定>である。広域協組は、正当な理由もなく、業務妨害をすれば当然、商取引は停止されるという当たり前の決議をしたのだ。広域協組傘下の組合員は、そうした規約を承認して加盟している業者である。
さらに、広域協組がさきの<本件意思決定>に基づき、株式会社中央大阪生コンなど同協組加盟社が、被告との取引を拒絶したことについて先述したが、原告は、独占禁止法19条が「不公正な取引方法を用いてはならない」と規定し、公正取引委員会が指定する「正当な理由なく、共同の取引拒絶」に該当するとして、独占禁止法違反と主張した。しかし、判決は「正当な理由があれば独占禁止法違反に反するものではなく、不法行為にも該当しない」と判断。その理由として、「被告が本件専属運送委託契約の更新を拒絶したことは、連帯の組合員による生コン生産業者に対する業務妨害行為に対する措置として、広域協組が行った本件意思決定に従った結果によるものであり、そのことは、独占禁止法における共同の取引拒絶に関する正当な理由に該当するものであるから、私法上も違反とはいえず、不法行為は成立しない」と述べている。まさに連帯系業者の完敗である。
次回から、関生支部のセメント出荷妨害事件の全容を追う。
※記事をより読みやすくする目的で、偽装労組Vol.4から、強調の意味での「 」や、新たに登場する会社名については、2回目以降の(株)表記を省略しています。