独占連載「偽装労組」
連帯ユニオン関生支部の正体を暴く。
連帯ユニオン関生支部の正体を暴く。
2021.04.15
前回Vol.38(2021年3月31日掲載の『<朝日>が<関生運動>の意見広告掲載』)で、連帯ユニオン関西生コン支部(以下、関生支部)委員長である、武建一被告の論告求刑公判が、同3月30日大阪地裁で開かれ、検察側が恐喝などの罪で懲役8年を求刑したことを報告した。武被告の判決は7月中旬にも言い渡される見込みだ。今回は、その武被告が「逮捕者を出してでもやれ」と指示し、行われた通称<大阪港SS (サービスステーション、以下省略)事件>について改めて取り上げる。
<大阪港SS事件>には、武被告をはじめ20数名の関生支部幹部と組合員が関与し、昨年2020年10月8日、同支部執行委員争議対策部長の西山直洋被告と、同支部副委員長の柳充被告に対し、大阪地裁はそれぞれ懲役2年6月、執行猶予5年の一審判決を言い渡したところである。
今回は<大阪港SS事件>で<分離裁判>となった、同支部副委員長の七牟禮時夫被告、執行委員の中尾正登被告、同弘田孝明被告、組合員西島大輔被告ら7人の被告に対に対する、2021年1月27日、大阪地裁で開かれた論告求刑公判について報告する。7人については、同年3月15日に同裁判所で、有罪判決が言い渡された。
同公判で検察側は、威力業務妨害の罪で七牟禮被告ら5人に懲役2年、組合員2人に懲役1年6月を求刑した。以下、公判の概要を紹介する。
まず、通称<大阪港SS事件>とは、2017年12月12日~13日、大阪市港区の宇部三菱セメント(株)・大阪港SSで行われた出荷妨害事件のことを言う。七牟禮被告らが関与した事件は4つだ。この4つの事件は、先に有罪が言い渡された西山、柳両被告の大阪地裁での判決を紹介した本連載シリーズ『セメント出荷妨害事件の真相』ほか(Vol.26~Vol.32)でも明らかにしている。事件は重なるものの、<分離裁判>となった七牟禮被告らの、威力業務妨害事件の論告求刑公判であることから、事件の概要を改めて紹介することにした。
先に述べた4つの事件とは、以下の通りだ。①平成29(2017)年12月12日、前述の<大阪港SS>出入り口及びその周辺路上で、七牟禮被告や弘田被告、西島被告らが支部執行委員、争議対策委員(2人)らと共謀し、(株)植田組運送店(大阪港SS内、以下、植田組運送店)が運行する、バラセメント車の前方に立ちふさがるなどして、バラセメントの輸送業務を妨害した。②同日、七牟禮、中尾、弘田、西島の各被告らが、組合員と共謀の上、大阪市西成区津守の(株)中央大阪生コン(以下、中央大阪生コン)の出入り口付近において、同社が運行する生コンクリート輸送車(ミキサー車)の前方に立ちふさがるなどして、生コンクリートの輸送業務を妨害した。③同月13日、七牟禮被告、中尾被告、執行委員らの被告らが共謀し、<大阪港SS>出入り口及びその周辺の路上で、植田組運送店が運行するバラセメント車の前方に立ちふさがるなどして、バラセメント輸送業務を妨害した。④同日、七牟禮被告や被告の執行委員、組合員が共謀し、<大阪港SS>出入り口及びその周辺路上で、ダイワN通商(株)(大阪府高槻市、以下、ダイワN通商)が運行するバラセメント車の前方に立ちふさがるなどして、バラセメント輸送業務を妨害した。
この4つの事件のうち、①③④は<大阪港SS事件>②は<中央大阪生コン事件>という。
それでは、この一連の威力業務妨害事件の争点は何か。
検察側は、七牟禮被告らがかかわった3つの<大阪港SS事件>と<中央大阪生コン事件>とも、関西生コン支部が、組織の活動として、<大阪港SS>から生コンの原料であるパラセメントの輸送を止めることにより、<大阪広域生コンクリート協同組合>(大阪市中央区)に加入する、生コン業者等の製造・輸送業務を止めようとしたこと。<大阪港SS事件>の実行犯でもある七牟禮被告人らが、<中央大阪生コン事件>の実行犯であること。被害会社は、植田組運送店、中央大阪生コン、ダイワN通商の3社であること。被告人らは、この被害会社3社の輸送業務を妨害したこと。各被害会社のいずれにも、関西生コン支部の組合員はいないことに、争いはないと主張。これに対して、被告人は、「正当な労働組合の活動である」と弁解し、弁護人は、「威力業務妨害罪の構成要件該当性も共謀も認められない。これらが認められるとしても、正当な労働組合の活動として違法性が阻却(退けられること)される」と主張しているが、検察側は、威力業務妨害の構成要件該当性も共謀も認められ、違法性阻却事由は認められないと反論している。
検察側は、<争点>での主張を、順次、詳述している。まず、威力業務妨害罪の構成要件に該当することとして、以下のように述べている。
<大阪港SS事件>も<中央大阪生コン事件>も、被告人ら実行犯が各被害会社の輸送業務を阻害したことには争いはなく、その行為態様は、その状況を撮影した動画等の証拠により客観的にあきらかであるが、いずれの被告人も「運転手に対し説得したに過ぎない」と弁解し、これを受けて弁護人は、被告人らの実行行為について、「威力に当たらない」旨を主張していると指摘。
検察側は、その<威力>とは何かを、こう解説している。
<威力>とは、人の意思を制圧するような勢力であり、<威力>に該当するか否かは、犯行の日時場所、犯人側の動機目的、員数、勢力の態様、業務の種類等の諸般の事情を考慮し、それが客観的にみて、人の自由意思を制圧するに足りうるものかどうかによって判断すべきものであって、現実に被害者が自由意思を制圧されたことを要するものではないと解される(最高裁昭和28年1月30日、同昭和32年2月21日)。
次回は、<大阪港SS事件>7人の被告の判決について報告する。
※記事をより読みやすくする目的で、偽装労組Vol.4から、強調の意味での「 」や、新たに登場する会社名については、2回目以降の(株)表記を省略しています。