独占連載「偽装労組」
連帯ユニオン関生支部の正体を暴く。
連帯ユニオン関生支部の正体を暴く。
2021.05.14
連帯ユニオン関西生コン支部(以下、関生支部)による威力業務妨害事件、いわゆる<大阪港SS(サービスステーション、以下省略)>事件のうち、関生支部副委員長の七牟禮時夫被告ら7人に、去る3月15日、大阪地裁で有罪判決が言い渡された。前回に引き続き判決内容を詳述する。
判決は前提事実について、被告と被害企業について簡単に紹介している。
まず被告だが、七牟禮被告は平成元(1989)年頃、関生支部に加入し、平成7(1995)年頃から執行委員、平成28(2016)年頃から副委員長をそれぞれ務め、本件事件当時、現場責任者をしていた。争議対策部副部長の大原明被告は、平成6(1994)年頃、関生支部に加入し、平成22(2010)年頃から執行委員を務めていた。弘田孝明被告は、平成16(2004)年頃、関生支部に加入し、平成28(2016)年頃から執行委員を務めていた。中尾正登被告は、昭和63(1988)年頃、関生支部に加入し、平成29(2017)年頃から執行委員を務め、事件を起こした平成29(2017)年12月当時、関生支部グループ企業の近酸運輸(株)(兵庫県尼崎市、以下、近酸運輸)津守営業所(大阪市西成区)で、配車係として働いていた。木村義樹被告は、平成5(1993)年頃、関生支部に加入し、平成29(2017)年12月当時、争議対策部に所属していた。青木健太郎被告は、平成7(1995)年頃、関生支部に加入し、平成29(2017)年12月当時、争議対策部に所属していた。西島大輔被告は、平成20(2008)年頃、関生支部に加入し、平成29(2017)年12月当時、争議対策部に所属していた。
この7人の被告以外、分離裁判になっている尾白一善被告は、平成29(2017)年12月当時、関生支部組合員だった。
続いて、被害関係会社を紹介する。関係会社については、<偽装労組>連載記事で何度か登場しているが、どんな会社なのか、あらためて紹介しておく。
まず、(株)植田組運送店(大阪市港区、江袋芳味代表取締役、以下、植田組)。<植田組>は、バラセメントの入出荷、管理及び輸送を業務内容とする会社で、宇部三菱セメント(株)(以下、宇部三菱)大阪港SSに事務所を置いている。<植田組>は、バラセメントの製造販売を行っている<宇部三菱>との間で、<大阪港SS>の業務に関して業務委託契約を締結。<宇部三菱>の注文に従って、生コンクリート製造業者などに対し、自社のバラセメント車又は下請けである(株)寿運送店(以下、寿運送店)及び近畿トランスポート(株)のバラセメント車で、<宇部三菱>の製造したバラセメントを輸送している。<植田組>の江袋社長は、<寿運送店>の代表取締役を兼務している。<植田組>及び<宇部三菱>には、関生支部に加入している従業員はいない。<大阪港SS>には、車両が出入りする北側出入口(以下、北門)及び西側出入口があるが、入出荷には北門が使用されていた。
(株)中央大阪生コン(大阪市西成区、延山春鷹代表取締役、以下、中央大阪生コン)は、平成27(2015)年1月に設立された生コンクリートの製造及び出荷を、業務内容とする会社である。<中央大阪生コン>は、<宇部三菱>からバラセメントを購入し、<大阪港SS>から<中央大阪生コン>まで、ダイワN通商(株)(大阪府高槻市)がバラセメントの輸送を行っていた。<中央大阪生コン>には、関生支部に加入している従業員はいない。<中央大阪生コン>は、その敷地の南側に正面出入口がある。近酸運輸は、<中央大阪生コン>設立後、平成29(2017)年12月11日まで、<中央大阪生コン>の依頼を受けて、同社が製造した生コンクリートを輸送しており、同日まで、<中央大阪生コン>の敷地内にミキサー車7台を駐車していた。中尾被告が働いていた近酸運輸津守営業所は、<中央大阪生コン>の敷地内にあった。近酸運輸の従業員は、全員関生支部に加入している。
続いて、犯行に至る経緯について判決は、こう明らかにしている。
関生支部は平成29(2017)年11月25日、中央委員会で、バラセメント及び生コンクリートの輸送運賃の値上げを目的として、同年12月12日から無期限のストライキを実施することを決定した。七牟禮被告らは、遅くとも同日に<大阪港SS>または<中央大阪生コン>に向かうまでには、ストライキに参加することを決意した。
12月8日、大原・中尾両被告は、<植田組>を訪れ、同社の江袋社長に、同月12日から、輸送運賃の値上げなどを目的とするストライキを実施する予定であることを伝え、<植田組>もこれに協力するよう求めた。これに対して江袋社長は、こう回答した。「植田組は関生支部と労使関係になく、出荷するかどうかは宇部三菱が決めることなので、ストライキに協力することはできない」。にもかかわらず、大原被告は、翌9日、今度は<植田組>の下請けである<寿運送店>を訪れ、江袋社長に前日と同様の申し入れをしたが、同社長はことわった。
一方、江袋社長からバラセメントの出荷について相談を受けた<宇部三菱>は、通常通り出荷する方針とした。江袋社長は、<植田組>などの運転手に、同月12日から関生支部が、輸送運賃の値上げなどを目的としてストライキを実施すること、<植田組>及び<宇部三菱>としては、通常通り出荷を行うことなどを説明した。<植田組>等の運転手の中で、ストライキに協力する意向を示す者はいなかった。
次回は、<中央大阪生コン>に対する威力業務妨害の経緯と、大阪地裁が七牟禮被告らの犯行が同罪の構成要件に該当するかどうか、その検証内容について報告する。
※記事をより読みやすくする目的で、偽装労組Vol.4から、強調の意味での「 」や、新たに登場する会社名については、2回目以降の(株)表記を省略しています。