KURSレポート
KURSや仲間の活動情報をタイムリーに。
KURSや仲間の活動情報をタイムリーに。
2023.12.28
2023年12月9日(土)、建交労関西支部(全日本建設交運一般労働組合関西支部。以下、建交労)会館2階ホール(大阪市淀川区)に、KURS・KLWSの執行部や加盟する各労組の代表が集まり、今年の活動の総括と、明けて2024年春闘へ向けての運動方針提起を目的とした<KURS(近畿生コン関連協議会)・KLWS(関西労供労組協議会)第6回総会>が開催された。
今総会のスローガンは、『新たな集団的労使関係の確立で全ての労働者を対象にした要求実現をめざそう』だ。このスローガンの肝は<全ての労働者を対象にした…>という言葉を使った点にある。前回は、<KURS・KLWSに結集する仲間の…>だった。しかし我々は労働組合である。現在KURS・KLWSとして、共に賃上げや処遇改善等に向けて活動を行っているが、自分たちだけでなく、未組織・未加盟の人も含めて、生コン業界の全ての労働者も含めていることを、改めて意識しようということだ。またこれは、我々がこの業界で働く全ての労働者の要求実現を目指すという、今後へ向けての意志表明でもある。
はじめに、今総会の議長並びに司会進行を務める、KURS事務局次長藤川拓氏から「2017年12月に、連帯がルールを無視して(ストと称した)蛮行を行って以来、袂を分け、2018年にKURSを、その翌年にはKLWSを発足して、総会は今回で6回目。この間、業界団体ともその点(連帯に対する姿勢等)で一致し、協議を尽くしながら業界の改善を進めてきた。幹事会も、回を重ねるごとに運動の到達点を確認しつつ、団結も深まってきた。このあと、この1年間の取り組みを振り返り、今後の方針について議案を提起されるので、本日お越しの各労組代表の方々と議論をしていきたい」と、挨拶があった。
その後は、KURS議長の北小路敏樹氏から、「2023年春闘の経済要求では、各社の実情をふまえ円満に協議して解決するなどで妥結。また物価高に対する非正規労働者の日額賃金の引き上げには、しっかりと取り組むことができた。その中でセメント大手2社は、セメント価格の引き上げで業績が改善しており、バラセメントの運賃が上がっているにもかかわらず、賃上げ実現ができていない。2024年には物価高・資源高・円高が続き、相当厳しい状況が続いていくと予想されるため、次の春闘では、2024年問題(運転手不足)も含め、物価上昇に見合う賃金の上昇に取り組みたい」と、挨拶。また北小路氏は、今総会でKURS議長を退任することを表明した。
続いてKLWS議長の松居順一郎氏は、「今日は結成以来、6回目の総会。今年も9回の幹事会を行い、様々な協議を重ねてきた。そんななか労供の方では、1,000円の実質賃金の上乗せを約90%実現できた。そして今年の4月にはKURS・KLWS独自で、安全講習会を開催、また8月には安全啓蒙キャンペーンでポスターを作成してプラントに掲示してもらい、そのキャンペーンの一環として、安全標語の募集と、12月にはその優秀作品をポスターに掲載するという活動を行った。このような活動は24年春闘にアピールできると思う。来年の春闘は、これまでに増して、賃上げの気運が上るのではないかと思うので、今総会で、皆さんと意義ある議論を尽くしたい」と、挨拶。KURS事務局長である岡元貞道氏の議案提起につないだ。
議案の詳しい内容は、各労組代表が持ち帰った<議案書>を参照してほしい。また概要については、下記の添付画像(KURS・KLWS第6回議案書表紙と、もくじ)をご覧いただきたい。
挨拶に続いて、岡元氏の議案提起が行われたが、そのなかで特に印象に残ったキーワードがあった。<協組と労組の連携>と<合意・協力、提携>だ。
この6年間の要求闘争の中で我々が行ってきたことは、KURS・KLWSを結成し、これまでの<モノとり・対決型><会社従属型>の労働組合運動から大転換を図り、全ての労働者を対象にした要求闘争へと舵を切ったこと。ただしそれは、我々労組だけでできるものではない。近畿地域の生コン事業者に声をかけて大同団結を図り、じり貧であった生コン事業経営を改善し、生コン事業者の実利に結びつくように動いた、広域協組の組織力や価格政策と無関係ではありえなかった。つまり<協組と労組の連携>が現在の生コン業界をつくり、今後も車の両輪のように、横道にそれることなく業界を前へ進めていく。そのためには、これからも我々の連携が重要であるということだ。
そしてもうひとつ。協組と労組が連携するために、<合意・協力、提携>で当事者責任を共有すること。
これから我々は、広域協組・オーナー会(一般社団法人西日本建設関連オーナー会)と、一致点に基づいて、業界の課題改善達成に向けて<合意・協力>し、また重要課題については<提携>していく、という<新たな集団的労使関係>、並びに労組間の共同・共闘関係をさらに発展させることが求められる。つまり労働者の要求実現は、中小企業の発展なくして図れない。<協組と労組の連携>そして<合意・協力、提携>。これが2024年春闘の、また今後の活動において重要な課題のひとつとなることは間違いない。我々はこれから、その新たな領域を目指さなければならないのだ。
議案提起の終了後、質疑応答の時間となった。これまでは賃金や一時金など経済要求に関する意見が目立ったが、今回多かったのが、直接、現場に行く生コンワーカーから吸い上げた生の声や、普段、代表自らが感じていることなど。特に多かったのが、プラント側やその先のゼネコンからのパワハラまがいの扱いを受けるなどの問題についてだ。質問や意見などと、それに対する岡元氏の応答を、以下に要点をまとめてみた(順不同)。少し長くなるが、一人ひとりが一緒に考えてほしい。
●労組代表からの意見
「年間125日の休日ということで、土曜日が休みになるんですが、それは来年の1月1日からの話でしょうか?そうなると専業労供は、その分の賃金がまるまる減ってしまうんで、どうなるか詳しく把握しておきたい」
【岡元氏の応答】
「これは、オーナー会と決めた<モデル賃金>と連動したもので、今すぐにこうなると言う数字ではない。ただ、こういう目標を決めて進まないと物事が動かないので、これを決めて動いています。で賃金の話がありましたが、これを実現したときには、当然、休んでもいいように賃金も上げていないといかん。そうして、業界全体が良くなっていくことを目指しています」。
●労組代表からの意見
「プラントからの圧力も多いです。パワハラというか、威圧的な言動が多いですね。中には『歩き方が悪い』とか言われる。で、人によっては事業所に忖度をする人もいて、そういう人を優先的に来させてくれと言う話もある。だからオーナー会も、プラント側に対して、どの組合員に対しても平等に扱ってほしいと言ってもらいたい。それでも、もし出禁にするなら、お互いに納得がいくような説明をしてほしいです」。
【岡元氏の応答】
「ハラスメントについては、ぜったいに認められへん。徹底してなくすために今春闘にも課題として入れてる。これはどの事業所も当事者責任がある。けど1事業所やと言いにくい。僕らはそれをオーナー会に報告せなあかんねん。たとえ武建一がいなくなって、パワーバランスが変わったと言うて、圧力かけてもええなんて言うことはない。これは徹底して言わなあかん。だから、僕らにその情報を報告してほしい。何も報告が上がって来なかったら、何事もないと思われてしまう。僕らはしょっちゅうオーナー会に行ってるんやから。ここに情報を集約して、それを要請や要求にかえて相手に理解してもらうというようにしたいので、よろしくお願いします」。
●労組代表からの意見
「新規雇用の場合は、日雇い雇用保険や特例健康保険等がありますが、組合員の中にも保険を持っている人いない人、事業所でも雇用保険しか持ってない場合もあります。で、労々間で人員の貸し借りをした場合、片印紙の所には出せない。例えば大阪の場合、事業所が健康保険に入っていて、組合員が除外申請をしたら(印紙)を貼らなくてもいいし、当然、賃金から保険料は引かれない。(でもそうではない事業所もある)僕は、事業所はまず健康保険に入るべきだと思う。(そういうふうに改善したい)」。
【岡元氏の応答】
「これは法律違反なんで、あかんことなんです。今年の春闘要求にも項目として書いてるんですけど、それぞれの事業所の歴史的経緯もあってそうなっているところもあるし、我々もこれはまだ追求したり深堀りができてない。だからいま言われたような矛盾が起こるんですけど、これは来年の春闘の課題として、11団体でまとまって言えば、議論できると思います」。
以下の4つの要望や意見については、まとめて回答があった。
●労組代表からの意見
「ウチは傭車会社が多いんですけど、プラントに直接で行くのはいいんですけど、輸送の2次3次になったとき、1次会社から焦らされていることが多い。で、それだけでなく『あの運転手、次から来さすな』言われることが、最近ひんぱんにある。そういうことが原因で事故も増えています。ウチでも事故報告書を書くんですが『急いでた』『慌ててた』が多い。そういうのもオーナー会を通じて輸送協の方にも伝えてほしい」。
●労組代表からの意見
「事故は、小型の現場が多いです。だから企業に対しても、地図の確認とか、分からなければ、その現場(担当)の電話番号だけでも伝えてほしい。でないと現場への入り方も分からない。それを訴えても『忙しいから聞かれへん。これ1台だけや』とか言う。で、そう言うときに限って事故になることが多い。プラントには、侵入路ぐらい確認してくれたら事故もかなり減るはず、と言うても『そんなんできへん』の押し問答です。じゃあ、事故を減らすために、ウチはどうしたらええんですか?と言うんですけど『お前んとこが悪いん』となる。だからオーナー会には、事故を減らすことを、ほんとうに真剣に考えてほしい」。
●労組代表からの意見
「現場内のちょっとした事故について、誘導員が悪いとか運転手が悪いとかいろいろ検証するんですが、よく考えてみたら明らかに現場が狭いことが多い。1台付けしか難しいのに2台付けにしているとか、誘導員さんの安全確保の場所もない。で、立会いさんや監督さんにいうても『権限がない』。工場からお願いしてもうまくいかない。とにかく現場が狭い。安全帯をしていたら降りられない所もある。そこの所長とオーナー会とで話してもらうとか、何か考えないとギリギリの状態ですね」。
●労組代表からの意見
「駐車場から就労先のプラントへ行くときの時間が、サービス残業のようになっている問題。プラントで働く組合員は7時や7時30分ぐらいに出社して段取りしてやってたら、それなりの給与が貰えるけど、傭車屋さんは1時間前に行って『何してんの』言われてサービス残業になる。で、そうなると組合員のモチベーションに関わるので、この問題も進めていかないといかんと思う」。
【岡元氏の応答】
「いろいろ意見がありましたが、仰る通りやと思います。けど僕らは組合やから、『どっかの誰かが勝手に言うてる』とならないように、問題を要求にかえて、相手方に問題を提起していかないとあかん。現場の案内を徹底してくれということなら、事故が多い原因はこんなところにあると事例を付けて、オーナー会やら広域輸送協に言わなあかん。専業労協の人が行かなくても、労使関係のあるウチと産労さんとで行って『安全対策やっているのに、こんなことが起こってる。改善してもらわないと困ります』と言える。
やっばり関西の生コン会社の経営者は、過去の経緯もあってほんまに色んな人がいる。だから僕らも言うけど、例えばオーナー会の菅生会長に言うてもらうとか。輸送協は広域協組の中に入ってるんやから(そのルートで言うとか)。言い方を工夫して、相手が『これは改善せなあかん』と思うように仕向けていかなあかん。手段を間違うと反感買うだけになる。時間はかかると思うけど、こっちが大人になって説明して、さすがKURS、KLWSやなと、言われるようにせなあかんと思う。それが僕らの義務でもあるから。経営者側に『ここまで頑張ってるのを放っとくのは、お前の所がおかしいで』と周りから言わせなあかん。僕らは要求する団体やけど、業界を良くするためには、そういう義務も果たしていかなあかん。そういう考え方で労使関係をつくっていきたい」。
議案の提起も重要だが、これら現場の声を聞くと、矢面(やおもて)に立つ各労組からの意見は非常に重いもので、対プラントだけでなく、元をただせばゼネコンの方針や課題、またその裏を返せば世の中の矛盾のようにも聞こえるが、それも働く者として、またひとりの人間の意見として、発信しなければ何も変わらない。岡元氏が提起した、今後の課題にもあったように<協組と労組の連携>、そして<合意・協力、提携>で、当事者責任を共有しなければ良くならない。これらの課題が明確になったことが、今総会の意義ではないだろうか。
もちろん、我々、働く側に悪いところがあれば直さなければならないし、プラントやゼネコンに直すべきところがあれば、改善してもらわなければならない。それが生コン業界、ひいては土木建設業界を良くしていくことにほかならない。すぐには改善されないかもしれないが、一歩ずつ積み上げていかなければ何も始まらない。
最後に、KURS事務局次長 寺岡正幸氏からの閉会の挨拶のあと、同氏の発声による<団結、頑張ろう!>の三唱で、KURS・KLWSの第6回総会は閉会した。