推しプラ
あなたの[イチ推しプラント]はどこですか?
あなたの[イチ推しプラント]はどこですか?
2024.12.04
生コンワーカーの目線で、近畿地域の<イチ推し生コンプラント(工場)>をご紹介する、新企画『推しプラ』。Vol.17は、広域協組・播磨ブロックの<大開産業(株)>(以下、同社)だ。
これまで生コンプラントを紹介する際、製造から90分以内に現場必着という生コンクリート独自のルールや、売り上げがその地域で計画されている開発物件数に左右されるという状況から、個社が社員を増やして、規模を拡大することは難しいと言ってきた。しかし今回の取材で、必ずしもそうとは言い切れないことが分かった。
70名の社員を雇用する同社は、どのような強みを持っておられるのか、経営陣にうかがった。
同社が立地する三木市は、兵庫県の南東部にあり、市域の南部・東部のほとんどが同神戸市の北西部に隣接、そのほかの境界を、同三田市、加東市、小野市、加古川市、加古郡稲美町と接している。古くは古代から戦国、近世、近代と歴史に翻弄されつつも商工業、農業などで発展。1954年に三木、別所、細川、口吉川、志染の1町4村が合併し、三木市が誕生した。
同市は、<金物と酒米とゴルフのまち>だ。金物は、戦国時代に秀吉に攻められて荒廃した当地を建て直す大工・鍛治などの職人が、復興後に仕事を求めて京都・大阪へ出稼ぎ。その際、彼らが使う金物が評判になったのがはじまりだ。年配の方には懐かしい<肥後守(ひごのかみ)>の製造は、1890年代に三木市で始まっている。また酒米として知られる<山田錦>は、もともと同市北東部に位置する美嚢郡吉川町でつくられていたが、2005年に三木市と吉川町との合併により同市の特産となった。そしてゴルフをされる方ならご存知とは思うが、当地はゴルフ場の数が全国第2位(2024年1月現在)を誇る、兵庫県のなかでも最もコース数が多い地域だ。
そして同市にはもうひとつの顔がある。南に山陽自動車道、北に中国自動車道が走り、さらにその間を国道175号線が縦断する交通の要衝であることから、意外と企業の進出が多い。1970年頃からは〈緑が丘〉地区などで住宅開発が進展。同年に開通した中国自動車道など道路網の整備や、当時、運行していた鉄道(三木鉄道三木線(1916年〜2008年)や神戸電鉄粟生線)など、交通網の整備とも相まって神戸市、大阪市などのベッドタウンとして賑わった。現在は、アクセスの良さを活かした企業誘致を中心に、前述の三木金物や酒米などの地場産業、ゴルフによるまちづくり等を推進している。
同社は、そんな当地で1972年に創業。なんと当初は生コンプラントではなかったという。「ウチはもともとブロック(※1)屋やったんで、生コン業者としてはまだまだ後発なんです」。そう語ってくださったのは、専務取締役の永井秀樹氏だ。しかし同業者の廃業が続くなか、自社の将来を憂う永井氏は「この先、ブロックだけではアカン…」と考え、生コンの製造販売をはじめられたのだ。その後、JIS認証も取得。<二次製品>と<生コンクリート製造販売>の2部門を柱とした体制で事業を展開された。
当時は後発な上、協組に属さないアウト業者だったことから営業のご苦労は並大抵のことではなかったと想像できるが、二次製品という強みを活かして地域のお客様を増やしてこられた。その後は、<地盤改良材製造販売>、<エネルギー事業>なども加え、この業界では異例とも言える、70名もの社員数を誇る企業に成長された。2017年に広域協組に加盟したのちは、こだわりの技術力で協組の物件を確実にこなしつつ、全体の3割程度は、地域のお客様を守るためスポット案件に対応されている。
現在、同社の近隣では、2025年度中完成予定で山陽自動車道と三木市の市道とを結ぶ〈三木スマートインターチェンジ(仮称)〉の整備が進んでおり、完成すれば、当地は西日本における交通の重要拠点となるため、周辺地域は益々の発展が見込まれる。「ウチもこの前、配合の打ち合わせに行っていましたよ」と、笑顔で語る永井氏。生コンも二次製品も出荷が予定されているという。
そして道路網の充実は、出荷量増加の見込みだけでなく、生コンや二次製品の運搬や仕入れにも有利になるということ。同社の未来は、地域の発展と両輪で進んでいるようだ。
※1.同社で扱うコンクリートブロックは、ホームセンター等で売っている3つ穴の空いたブロックとは違い、道路脇の法面の崩れ止めや側溝、ガードレールの基礎などに使用するコンクリート製品のことで、生コンクリートを現場で打設するのではなく、工場で型枠に入れて固めた二次製品のこと。
所在地 | 兵庫県三木市加佐字草荷野1251-1(工場) |
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操業 | 昭和47年1月 (コンリートブロック製造販売業者として) |
代表取締役 | 松井 大典 |
社員 | 70名(内、ドライバー30名) |
出荷量 | 約60,000㎥/年 |
ミキサー | 1基(2,750L) |
生コン車台数 | 自社保有26台 (10t車:13台・8t車:6台・4t車:5台・3t車:2台) |
●代表取締役 松井大典氏
●専務取締役 永井秀樹氏
●常務取締役 松井宣介氏
●試験室 岩崎椋太さん
永井氏に、地域貢献というテーマでお話をうかがうと「ウチは、プラント周辺道路の清掃を定期的にやっています。月1回を基本に、手が空いているときは掃除していますよ」と、すかさず。そのほかには近隣の神社への寄付や花火大会への協賛、最近では、小野市のカーボンニュートラル(脱炭素)社会実現の考えに賛同し、地域貢献寄付型ファンド『小野市とともに(SDGs版)』に寄付をするなどの活動もれさていると教えてくれた。さすが地域に根ざして営業をしてこられた企業だけのことはある。
しかし、そもそも地域社会への貢献という切り口で、同社の存在をよく考えると、当地において70名もの社員を雇用していること自体、雇用創出という意味ではいちばんの地域貢献といえるのではないだろうか。70名の社員にはご家族もおられるだろう。もちろん全社員が三木市・小野市在住ではないとは思うが、兵庫県というくくりでも地域貢献には違いない。
そして同社の場合、雇用創出という意味では自社内だけに留まらない。SDGsを意識している同社では、地産地消を推進するため、近隣の採石場で採れる骨材等を優先的に採用するなど、産地の見える素材の使用を標準化しておられる。これも広い意味では、地域の雇用創出に一役買っていると言える。ちなみに税金(法人税)も三木・小野両市に均等に支払っておられるという。いろんな意味で、周辺地域に貢献しておられるのだ。
同社で、働きやすさや福利厚生について考える場合、70名もの社員が日々つつがなく働いているという現実から考えると、働きにくいとは考えづらい。そう思ってお話をうかがうと、なるほどとうなずけた。
まず福利厚生については、雇用保険や健康保険、厚生年金、年次有給休暇などの法定福利厚生だけでなく、年1回の社員旅行やひんぱんに行われるBBQ大会のほか、毎年お盆や年末の前には、全社員に美味しいお肉を贈ったり、釣りやゴルフなどの社内同好会的な活動には、費用の一部を負担。働く者やその家族からすれば、なかなか手厚い。また、月1回行われている<安全衛生委員会>では、産業医が場内を見回って改善が必要な場所の指摘を受けたり、健康についての講話があったり、健康診断のアフターフォローをしたり、職場環境の安全や社員の健康に関する注意喚起などを行っているという。このアドバイスにより工場内外へのスポットクーラーの設置や、休息室、喫煙室などが設置されている。
そして現実問題として最も大きいのが、期末賞与の制度だ。これは福利厚生ではないが、一般的な夏季と冬季のボーナス以外に、決算時期に会社に利益が出ていれば、期末ボーナスが出るという制度だ。「ウチは幹部には売り上げをガラス張りにしているんで、利益が出たら決算賞与を出さなあかんのです(笑)」と、永井氏。少なくとも、一般的な企業に比べても確実に年収は上がるだろう。また社員の誕生月には、毎年、全員に商品券を贈っている。これは社員にも、ご家族にもうれしいかぎりだ。
さらにもうひとつは、金銭的なことではない。同社の社内には<意見ボックス>が設置されている。この箱のなかへ、自身の意見やアイデアなどを自由に入れると、会社側が内容を早急に検討して、可能なものは実現するというものだ。もちろん匿名で構わない。すべてがボックスの意見からかどうかは分からないが、ドライバーのための<生コン勉強会>や毎日の朝礼での<ラジオ体操>実施など、社員から要望でスタートした取り組みが多い。社員の声の通りやすさ、つまり風通しの良さも同社の働きやすさを示す基準だ。
一方で、休日については土日合わせて月に7日制となっている。もちろん完全週休二日制が理想だが、土曜日に打設工事があれば、出荷しないわけにはいかない。これはギブ&テイクと言えるのではないだろうかだ。もちろん毎週土曜日が出勤なのではない。「土曜日は出荷が少ないんで、社員の体調や都合のことも考慮して、自己申告制でドライバーの半分ぐらいは休んでもらっています」。代表取締役の松井大典氏が話してくれた。こういう気遣いも、働きがいに大いにつながるのではないだろうか。「ふだん頑張ってくれているから、還元できる部分は還元したいですね」と、常務取締役の松井宣介氏も口を添える。これほど働きやすい職場もそう多くないだろう。
生コンプラントで、仕事に関するこだわりをうかがうと、やはり一丁目一番地に<品質>と言われることが多い。しかし同社の場合、品質に対するこだわりでも少し内容が違う。
永井氏にうかがうと、「ウチはいろんな生コンを練れるように、セメント6種、骨材は砂5種・石5種を扱っています。例えば高強度の場合は、島で取れるちょっと質の良い石が合うとか、配合のノウハウがあるんです。骨材を5種類も扱っているのは、全国でもたぶんウチだけやと思いますよ」と、胸を張る。通常は2種類程度で、もちろんそれでも生コンの品質には何の問題もないのだが、同社の場合、普通コンクリートにはこれ高強度コンクリートにはあれと、骨材等を細かく使い分けることで、お客様の多様なニーズにより幅広く対応できる。だから物件の取りこぼしが少なく、よそが断る仕事も受注できるということではないだろうか。
さらにこのこだわりは、70名もの社員の労働生産性を高める意味でも機能している。自社でセミロングダンプを4台所持して、二次製品の製造がないときなどには、社員が仕入れ先まで取りに行くのだ。そうすることでコストダウンにつながり社員の労働生産性も上がる。加えてSDGsにもつながっているという。つまり、骨材などを船で運ぶとCO2が発生するが、同社は地産地消を掲げて営業をしているため、できるだけ近隣の仕入れ先のものを使い、なおかつダンプを使って自分たちで取りに行くからだ。
以前から効率化に対する意識の高かった同社は、2006年に<GPS配車システム>を導入。現在では、生コン車の全車にGPS配車システムを導入し、お客様の要望に応えておられる。
先に、小野市のSDGsに関する寄付について述べたが、同社はSDGs(持続可能な開発目標)について、会社を挙げて取り組んでおられる。
「今は施主さんが環境にこだわる時代なのに、この業界はちょっと遅れていますね」と、永井氏。現在、同社では、生コンの製造に銅スラグやフライアッシュなどの産業副製品を有効活用したり、溶融スラグを二次製品に使用したり、排水中の六価クロムを排除する装置も装備したりと、環境負荷低減に前向きに取り組んでおられる。
「個社の事情もあるので一概には言えませんけど、できればこれからは、普段からSDGsに対応できるように、プラントのつくりを変更するべきやね。ウチはそう思うから、骨材ヤードを細かく分けて、何にでも対応できるようにしています」。永井氏は、こだわりを熱く語る。
また多くのプラントで、残コン・戻りコンでつくられている立米ブロックについては、永井氏がご自身で設計された独自の形状のものをつくるので、人気を博しているという。「これも二次製品部門のプロがつくるのでよく売れます。1年待ち、2年待ちのお客さんもおられますよ」。とにかく同社の環境に対する意識は、生コンプラントのなかでも群を抜いている。
永井氏に採用についてうかがうと、社員数の多さを活かして伝手が多いとのこと。なるほどと思うが、ただ社員に頼りっきりなのではない。ちゃんとした<リクルート用ビデオ>をつくっておられるのだ。
「今は、ドライバーもなかなか来てくれないでしょう?で、社員が知り合いに『ウチの会社へ入れへんか?』って声をかけても『どんな会社?』って聞かれる。でもなかなか上手く説明できない。だからそのために予算をかけて、プロに頼んでしっかりつくりました」と、胸を張る。今では人材を探すまでもなく、順番待ちの人がいるほどだそう。その効果もあってか大典氏からも「この5年で、かなり若返りましたよ。今の平均年齢は40歳ぐらいだと思います」と言えば、永井氏が「そうそう、ほんまに20代も30代もバランスよくいてますよね。ひとりで足を引っ張ってんのは僕ぐらいで(笑)」と、営業さんの本領発揮で場を和ませてくれる。同社に人材問題は関係ないようだ。裏を返せば、それだけ働きやすいということではないだろうか。皆さんにも同社のリクルート用ビデオをぜひご覧いただきたい。
いつものように取材の最後に、永井氏に今後のビジョンについてうかがうと「まずは社員が働きやすい環境づくりを進めたい」とのこと。今回、お話をうかがうかぎり、もうかなり進めておられると思うが、人材育成や資格手当の充実など、まだまだ先に進まれるとのこと。働く人にやさしい会社だ。
もうひとつ挙げられたのが、次の世代へ技術やノウハウを継承したいとの思いだ。先にも少し述べた通り、定期的に講習会や勉強会を実施していきたいとのこと。またその考えは、どのような職域の人に対しても変わらない。「実は、ドライバーのほうから生コンの勉強がしたいという申し入れがあったんです。『現場で聞かれて答えられなかったら恥ずかしい』って言うんです。それで年に何度か、仕事が終わってから、麻生セメント(本社/福岡市)の技術部門の人を講師に来てもらい<生コンとは何か>というテーマで、講習してもらっています」。今後のビジョンの話ではあるが、すでに進めておられるのだ。このほかに、資格試験の受験者に対する補習も行われているという。
お話をうかがっていて感じるのは、とにかく、社員の皆さんの自主性が高いということだ。前述の朝礼やラジオ体操、講習会だけでなく、会社側からの押し付けでないのに、事務所がきれいになってからは、自発的に掃除当番を決めて、掃除をされているという。「自発的にいろいろやってくれるから、僕らも助かっています」。取材にご協力いただいた皆さん全員がうなずく。
同社は、2024年1月にJR三宮駅近くに神戸営業所を開設された。ここは今後、新たな営業展開の拠点として機能することだろう。これからも二次製品という強みを活かし、地域のお客様と協組物件とのバランスをとりながら、産業・物流拠点という三木市のもうひとつの顔を、基礎の部分からサポートしてほしい。
『若い人同士で集まらず、世代に関係なく仲がいい!』
岩崎さんは、建築関係のお仕事をされていたお父様の影響で、子供の頃から建築の仕事に興味を持たれ、専門学校で建築土木を学んでこられた。ところが2年生のときに事故に見舞われ泣く泣く辞めることに。しかしその後、不思議なご縁で入社が決まった。なんと、仕事で同社の専務と社長のご自宅リフォームの施工されていたお父様が、たまたま椋太さんの話をしたのを機に、それならということで、就職の話が決まったという経緯だ。
ところで、学校では建築土木全般を学んでいた岩崎さんだが、生コンの仕事の具体的な知識は、さすがにほとんど知らなかった。「入社当時は、試験室に高校時代の2年上の先輩がおられたので、よく面倒を見てもらいました。実は昔からのご近所さんで、祭りのときにも仲良くしてもらっていたんですよ」と、明るく話していただいた岩崎さん。20歳で同社に入社されて、現在は試験室で采配を振るう7年目の中堅生コンワーカーだ。「先輩方からは、本当に丁寧に教えていただきました。入社して1ヶ月ほどは、先輩と付きっきりで現場に行かせてもらいました。最初は見ているだけで途中から実際にやらせてもらうんですが、失敗してお客様に怒られたときも先輩が一緒に謝ってくれたりかばってくれたことが忘れられません。今はその知識や経験を、僕が後輩には惜しみなく伝えています」。こんな素晴らしい社員のいる会社が、発展しないはずがない。
「ウチはとにかく社員の仲がいいですね。それも若い人同士などで集まらず、世代に関係なく仲がいいところが好きですね。例えば今も60代の先輩から『明日、釣り行くか?』って誘っていただいて、最近はよく行きます(笑)。お客様も参加されるので親しくなれて一石二鳥です」。実は、お父様が務める会社が試験室の工事を施工されたことから、お父様と同社の先輩方が知り合いだという。しかし岩崎さんのお話からは、その点を差し引いても、同社には人間関係の問題は似合わないことが分かる。「僕が入った頃は年配の方が多かったですけど、週末には『飲みに行こう!』って誘っていただいていました(笑)」。先輩方はリタイアされたが、社員同士のフランクな関係性は、7年経った今も変わらないという。
そんな岩崎さんの楽しみは、車に愛情を注ぐことだ。昔から、車を見たり乗ったり、ドレスアップしたりするのがご趣味だった。ご自慢の愛車は、ドレスアップのコンテストにおいて受賞されている。たしかに写真を見せていただくと、ピッカピカだ。自由にできる休日は、愛車の洗車やご友人とドライブしたりするのがお楽しみとのこと。
これからも趣味を謳歌しながら、先輩や後輩と共に、同社の発展に尽くしていただきたい。