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生コン業界の仕事や暮らしに役立つ情報をくわしく。
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2022.04.04
2022年3月30日、KURS(近畿生コン関連協議会、以下、KURS)・KLWS(クルーズ=関西労供労組協議会、以下、KLWS)と、一般社団法人西日本建設関連オーナー会(以下、オーナー会)の、<2022年春闘>最終交渉が行われた。会場は、2週間前に<近畿生コン関連協議会統一要求書>の趣旨説明が行われた、大阪市中央区にあるオーナー会会議室。出席者は、KLWSの意向を受けたKURS代表と、オーナー会の代表だ。
交渉は、予定時間より少し早くKURS事務局長の岡元貞道氏による進行でスタートした。
説明の前に、KURS幹事の木村敦豪氏から、大阪労働局から通達のあった<日雇雇用保険制度の運用見直しについて>に対する説明が行われたのち、岡元氏によって、<2022年春闘確認書(以下、確認書)>の説明が行われた。
岡元氏は、「今日、この書面の内容で、オーナー会側の最終確認が取れれば、これをもって2022年春闘の<合意>としたい」と、意欲を語った。
岡元氏は<確認書>に加え、今回の合意にあたって、合意内容に関する<4つの考え方>を提示。これについても賛同を求め、オーナー会側からは併せて了承された。その大まかな内容は次の通りだ。
各社の実情を踏まえ個社協議とする。但し、各社は誠実に協議し、円満解決を図れるように努める。
日々雇用労働者の日額賃金及び諸条件などの取り扱いについては、今後、オーナー会と継続協議をしていくこととする。
但し、日額賃金が18,000円(総額)に満たない社については、各社誠意をもって協議し底上げを図り日額賃金(総額)18,000円に到達させることとする。
夏場における誘導員の熱中症対策については、各社において空調服の貸与をはじめとする万全の措置を講ずることとする。
オーナー会と取り交わしたモデル労働協約・モデル賃金を基本に、諸法律を順守することを基本に各社協議とする。
60歳以降の賃金労働条件については、関連する法制度(パート有期雇用労働法・同一賃金同一労働ガイドライン)の趣旨を踏まえ、各社協議とする。
年間休日125日とし、休日設定は別紙カレンダー通りとする。
オーナー会とKURS・関西労供労組協議会(KLWS)は社会的道義に反する集団とは係わらないことを改めて宣言する。
運転手不足の解消にむけて新人研修及び人材育成の課題については労使双方の共通認識が持てるよう継続して協議していくこととする。
①<確認書>について、合意したガイドラインを、オーナー会加盟各社に周知徹底していただきたい。
②<日雇雇用保険制度の運用見直しについて>の内容(印紙取り扱いの変更等)について、理解・徹底をしていただきたい。
③労供労働者の処遇改善等をはじめとする継続協議について、その進め方についても協議していきたい。
④春闘合意後の個別交渉においても、円満解決が図れるように、関係各社に徹底していただきたい。
近年の春闘の傾向として、合意後、リラックスした雰囲気のなかで、労使双方の意見が交わされることが多い。今回も山田氏は、<確認書>了承の後、続けて次のように述べた。
「経営者のほうも、働く人のために『何かしよう、何かししたい』という気持ちになりたい。で、そうなるためには(ギブ&テイクで)、例えば有給の使い方なんかでも、すべてでなくても、会社側に少し協力をして貰いたい部分もある。もちろん権利やから休んでもらってもええんやけど、そこは会社とも上手く話し合って貰えたらええのかなぁと思う。それと労供労働者の方には、(月の労働日数が)12日や13日やというのではなく、本勤に近づけるような対策も取っていけるんやろうけど、そのためには経営者をその気にさせて欲しい。せっかく(この5年で)お互いの距離が縮まってきたんやし、賃金の件も退職の件も、来年は、この形でやるにしても別の形にしても、お互いもっと歩み寄った形でやりたいと、さっきも皆で話していたんです。それと<確認書>については何も言うことはありませんけど、これから業界も環境や法律が変わっていくと思うので、我々も対応していきますけど、すぐに対応出来るものと出来ないものがある。なので、そこはお互いで協議をしながら、前へ進めていければと思います」。
労働者側も経営者側も、自分たちの言い分だけを主張するのではなく、話し合い、歩み寄りが重要ということだ。KURS・KLWSとオーナー会の、5年間の関係構築は、少しずつだが実を結んできていると言えるではないだろうか。
岡元氏からは「いま話のあった有給休暇の使い方については、僕らもちゃんと議論をやっとかなアカンなぁ…と話しています」と述べ、労働者側からの対応の必要性を認めた。
それに対して「有給だけでなく、午前中、大型に乗っても、昼からは中型・小型に乗りかえてほしい時がある。そんな時に、まず本勤の人が前向きに対応してくれないと、会社としては、『何かしてあげたい』という気持ちになれない。そのへんも有給の話と同じで、ちょっと協力してもらいたい。一気にゼロにはならなくても、お互いに歩み寄って、ゼロに近づけないとアカン。春闘はそのための年に一度の機会やと思う」と、話に熱がこもる山田氏。実務を行っているKURS副議長の本多裕重氏や同事務局次長の寺岡正幸氏、同幹事の笠谷潔氏、また経営者側では新大阪生コンクリート(株)代表取締役の大峠勇 氏も意見を述べるなど、就労のあり方の本質的な問題を本音で語り合った。
最後に、双方の意見をじっと聞いていた、オーナー会会長の菅生行男氏からは、「人間(の気持ち)なんて、ちょっとしたことなんです。我々が『ようやってくれているなぁ…』と感じるぐらいに働いてくれたら、会社もそれなりのことをやらなアカンと思う。でもそれは、『これは決まりや!』と文書を作って(権利を)振りかざすのではない。今まで(の労使関係で)は何でも文書、文書やったけど、これからは、お互いの気持ちがどうあるかということを、それぞれ考えながら働いていかなアカンと思う。それで、もし何か問題が発生したときは、オーナー会に相談してくれたら、我々は両方の意見を聞きながら解決する。その調整役になりたいなと思っていますし、そういうことで問題を解消していかないと、これからは協同組合の運営もしにくくなる。そういう意味で、オーナー会の中での労使関係というのは<心ある労使関係>にしたいと思っています」と、双方の意見をまとめるように、労使の心に響く、象徴的な言葉<心ある労使関係>で議論を締めくくった。
今回の春闘では、それぞれ労使という立場にはあるものの、お互い業界発展をめざす者として、経営者の本音の部分を、これまで以上に明確に聞くことが出来たのではないだろうか。
KURS・KLWSは、労使間の話し合いと実務に役立つ活動で、業界発展や労働者の処遇改善を目指す組織だ。それを5年かけて実践してきて、オーナー会側にも、ようやく理解してもらえるまでになったことは、大きな前進と言える。
もちろん議論にもあったように、状況を一気に変えることは難しい。今回も、一部のテーマについては継続協議となったが、2022年春闘<要求書>の内容については、前向きの合意を得ることができた。
この後、4月1日に調印が行われることが決まった。
上記の最終交渉(2022年3月30日)を経て、翌々日となる同年4月1日、オーナー会会議室において、KURS・KLWSとオーナー会は、<2022年春闘確認書>の内容に合意し、調印を行った。