KURS(コース) /
近畿生コン関連協議会

特集

生コン業界の仕事や暮らしに役立つ情報をくわしく。

生コン業界の仕事や暮らしに役立つ情報をくわしく。

  1. 苦境の2023年春闘、2つの<希望ある前進>で合意

2023.04.14

苦境の2023年春闘、2つの<希望ある前進>で合意

<2023年春闘>の第4回最終交渉を行う労使代表。

3度の協議・検討を経て<2023年春闘>最終交渉へ

2023年3月30日、一般社団法人西日本建設関連オーナー会(大阪市中央区、以下、オーナー会)の3階会議室において、KURS(近畿生コン関連協議会)・KLWS(関西労供労組協議会)とオーナー会の、最終交渉(第4回目の集合交渉)が行われた。

はじめに、これまでの交渉の経緯を確認しておきたい。

●第1回集合交渉(2023年3月8日)…労組側が<2023年近畿生コン関連協議会統一要求書> を提示し、趣旨説明・協議を行う(オーナー会側はそれを持ち帰り検討)。

●第2回検討案回答(同年3月15日)…オーナー会側が<2023年近畿生コン関連協議会統一要求書>の内容について意見を述べ、労使で協議。別途、作成した<日々雇用労働者の日額賃金に上乗せ「手当」支給についての要請書>に調印。

●第3回検討案協議(同年3月22日)…<2023年近畿生コン関連協議会統一要求書>の協議内容について修正案を提示し、引き続き労使で協議。

●第4回最終交渉(同年3月30日)…協議した内容をふまえて作成した<2023年春闘確認書>を提示。労使協議のうえ合意をめざす。

今回の交渉は、上記の経緯のなかで<第4回最終交渉>となるため、儀礼的な挨拶は省略して、すぐに本題に入った。まずはKURSの岡元貞道事務局長から<2023年春闘確認書>を基に、オーナー会側から意見を提示された、正規労働者に対する経済要求の内容について意見が述べられ、内容・表現について労使による協議となった。

オーナー会側に意見を述べる、KURS事務局長の岡元貞道氏。

オーナー会側に意見を述べる、KURS事務局長の岡元貞道氏。

苦しい状況のなか労使協議で得られた、2つの<希望ある前進>

今春闘は、我々労組側に対してたいへん苦しい交渉となった。世間の多くの業界・企業が、賃上げの傾向にあるからだ。一方で我々の業界は、生コンの販売価格は値上げされたが、業界独自の商慣習から、この1年、経営側が想定外の苦境に立たされているからだ。

第1回目の集合交渉で、生コン販売価格の値上が実施されるのは新規契約分からで、現行の旧契約物件におけるセメント等の仕入価格値上げ分は、広域協組(大阪広域生コンクリート協同組合)が負担するという、オーナー会側の苦しい事情を聞いてはいるものの、やはり組合員はやりきれない思いを募らせている。そんな組合員の声を代表して、KURSの本多裕重副議長は協議の途中で、「今春闘はどこも賃上げ基調です。我々の組合でも、トラック(部会)なんかは、昨年以上の回答をされているところが大半。そんな事例を組合員が聞いているんです。もちろん、今までオーナー会が、いろんな形で協力してくれていることには感謝しています。でも組合員のいちばんの関心事はやはり賃上げ。正規労働者の賃金はこの5年間横ばいなんで、そろそろこっちにも回してよという声が上がっている。我々は、そんな組合員の代表としてここに来ているんです」と、切実な状況を訴えた。

もちろんオーナー会側も、そんな労組側の事情を分かっているからこそ、第1回目の交渉で、オーナー会の菅生行男会長自らが、挨拶のなかで労組側に対して<お願い>を述べたのだ。

そして今回の労使協議の結果、このように労使共に苦しい事情があるなか、2つの内容について<希望ある前進>があった。これは特筆すべきことだ。

労組側の苦しい状況を訴える、KURS副議長の本多裕重氏。

労組側の苦しい状況を訴える、KURS副議長の本多裕重氏。

物価高騰を鑑み、正社員の賃金の取り扱いは<職場協議>に

まずそのひとつは、正規労働者の賃金引き上げについてだ。

確認書では、<今期については、今般の物価高騰を鑑みオーナー会加盟各社は、賃金の取り扱いについて職場協議する>こととなった。

つまり、残念ながら満額回答とはいかなかったが、たとえ苦境であっても、経営状況も働き方も個社によって事情はバラバラだ。だから具体的な数字には表せないが個社ごとに<職場協議する>と、希望を残す形で合意した。

加えて、詳しくは後述するが、今後に向けて、賃金を始め幅広い分野で労働環境を改善する、委員会の立ち上げが決まったことも大きな前進だ。

労使の連携で、すでに38事業所が非正規労働者の<手当>支給を決定

そしてもうひとつは、日額賃金が20,000円に満たない日々雇用労働者に対し、1就労あたり、1,000円の<手当>支給が決定され、それが労使代表の連携によって、今交渉(3月30日)の時点で、多くの事業所で支給実施が進んでいることだ。

この<手当>については、第1回目(3月8日)の集合交渉で支給が決まったが、支給開始が4月1日からで、個社への周知徹底をする時間が少ないため、交渉の席上で、労使代表の署名捺印入り<要請書>の発行と、オーナー会加盟各社への更なる告知を決めるなど、オーナー会の協力も得ながらスピーディに動いたことが功を奏した。最終交渉である今交渉の時点で、すでにKLWSで38事業所での手当支給の決定が確認されている。また支給の実施状況については、秋頃に労使によって調査を行うことも決まっている。

労使共に苦しい状況のなかで行われた<2023年春闘>は、労使による歩み寄りによって、お互いが納得のいく表現に修正を行ったのちに、すべて承認され合意となった。

業界の未来に向けて、賃金等を決める<環境整備委員会>を設置

春闘の協議終了後は、先に述べた、労働環境改善をテーマとする会議の話題に移った。

労使という立場の違いはあるが、この5年間、<業界発展>を目的に、様々な協議・活動を重ねてきたメンバーだ。話は早い。会議の名称は暫定的に<環境整備委員会>に。趣旨としては、今後、業界に新たな雇用を生むため、賃金だけでなく、幅広く労働環境を改善するため、様々なテーマについて協議すること。メンバーもその場ですぐに決まった。今後、生コン関連業界を魅力的な業界にするために、この委員会はたいへん重要であり、スピーディな判断も必要なことから、オーナー会の菅生会長も参加する。

またあわせて、日々雇用労働者の条件整備についても、別途、労使による委員会を設置し、定期的に協議を行うことを決定した。

興味深いのは、<環境整備委員会>が春闘とは別に、今後の業界の未来に向け、様々なテーマについて労使で協議を行うという点だ。賃金も労働条件等も、今後はこの委員会で議論される可能性が高い。春闘を待たずとも、タイムリーな意思決定が行われるとすれば、新しい労使協議のモデルケースになるかもしれない。同委員会の今後の動向を、期待をもって見守りたい。

2023年4月3日に行われた、<2023年春闘確認書>調印のもよう。

2023年4月3日に行われた、<2023年春闘確認書>調印のもよう。

合意に至った<2023年春闘確認書>の表紙。

合意に至った<2023年春闘確認書>の表紙。

協賛団体

PAGE TOP