インタビュー・対談
生の声から、生コン業界動向や気づきを読み取る。
生の声から、生コン業界動向や気づきを読み取る。
2018.06.25
新しく誕生した和歌山県広域生コンクリート協同組合が、過去の協組とのしがらみを断ち切り、40代の若手理事を中心に現状の変革と次代の生コン業界の創造を担う。
最近の、和歌山県の生コン産業の状況は。
はっきり言って、生コンの出荷量がどんどん落ちていっている、というのが現状です。直近のデータを比べたら、年間で10%は落ちている。実は10%というのはすごく大きいんですよ。と言うのが、確か去年、その落ち幅が全国でワースト一位か二位だったんですよ。それぐらい落ちてますね。
その原因はなんでしょうか。
和歌山県は大阪府のように民間工事も少ないですし、公共工事は減少の一途でしょう。最近までは特需の工事があったんですが、それも終わってしまいました。まぁ、結局は元に戻っただけの話しなんですが、特需がある間は、業界としては備えも何もかも大きくしますよね。それがなくなると、一気にダブついてしまうんです。それに、この業界にも最近は、現地で生コンを型に入れて作るのではなくて、工場で形にしたものを持ってきて組立てる二次製品化が進んでいて、余計に生コンの出荷量が落ちているということもあります。
何か今後の対策は立てておられるんですか?
はい。実はその二次製品にもメリットとデメリットがありまして、例えばデメリットとしては強度の問題です。これは実証されているんですが、例えば水害が起こったとき護岸が壊れるのが、ほぼ二次製品を使った部分なんです。そういったことをアピールして、行政に対して「(災害時に備えて)現場施工は必要ですよ」という働きかけをする。そういう地道な活動しかないですよね。
和歌山県は、南海トラフ地震の被害をまともに受けますから、きちんと対策をアピールしないといけませんね。
正に、いま言っていただいた南海トラフ地震の対策としては、実は和歌山県の海岸沿いについては、もうだいたい出来ています。ところが東日本大震災で、それを越える津波がありましたので、今、既存の防波堤の背を高くする嵩(かさ)上げ工事とか、消波ブロックを前に入れる仕事が増えてきました。そういうことで、減少している下げ幅を少しでも補えたらと思ってやっています。
今、生コン業界は、労働組合問題で大変なんですか。
大変というか、特にこの和歌山県を含む近畿二府四県のことなんですが、連帯ユニオンという労働組合(以下「連帯労組」)がありまして、この十数年の間に連帯労組が業界を支配するような体制をつくっていたんです。私たちは労働組合がダメだと言っているんではないんですが、ここは労働組合という法で認められた団体を利用して、本来の労働組合の目的とはかけ離れた行動をしています。労働者の(ための)労働組合ではなしに、一部の幹部の人たちの資金調達のための労働組合なんです。そういう団体ですので、そういう組織と私たちが一緒に労使協調路線なんかで行くと、どんどん業界のほうに無理難題を押しつけられたり、条件をつけられたり、上納金を払わされたりする。そういうことが進んでいたんです。
一方で、今はコンプライアンスに対しても厳格な対応を求められる時代ですよね。そんな中で生コンは、今いちばんコンプライアンスに対して厳格に指導される建設業者様がほとんどメインのお客様なんです。なので、そのお客様に生コンを納入する業者としては、お客様のレベルに合わせた自分たちの業界を作っていかないといけない。そう考えたときに、このまま連帯労組と一緒に進んで行って良いのかというと、絶対ダメなんです。
具体的に連帯労組は、どんなことをしているのですか。
例えば建設業者様が、連帯労組の意に添わない生コン業者から生コンを買った場合。その建設業者様、つまりお客様を含め、私たち生コン製造業者に対して様々な嫌がらせをするんです。あたかも法で保障された権利の行使のように見せかけていますが、実際は何か問題があるかのような事実に反する表現を使って、街宣車を使った大音量の宣伝をしたり、大量動員をかけて多人数で押しかけて罵倒するというような、常軌を逸した行動をするわけです。
今の社会は、『暴力団=コンプライアンス違反』ということになってますけど、やっていることはそれと同じことなんですね。ですから私達としては、まずお客様に迷惑を掛けない。そして自分たち自身も、そういう団体に関わらない(利用しない、恐れない…)、という暴力団追放の標語がありますよね。それと同じ対応です。
それでも過去には一緒に行動することで、お互いが助かったということもあったんでしょうか。
残念ながらありました。私は、そういう団体を利用した生コン業界の上層部の方たちのことはA級戦犯と呼んでいるんです。この人たちが自分たちの手を汚さずに、連帯労組に「営業をかけてくれ、仕事をとってきてくれ」などと言う。それと自由競争の原理ってありますよね、それを無視する。例えば生コンをA社がいくらで売ろうが、B社C社がいくらで売ろうが自由ですよね。それなのに「あそこが少し安く売って業界を乱した」とか言って、お客様や生コン業者を責めていく。そういうことを利用してきた人達もいるんですが、それは今後、なくしていかないといけませんね。
そういう動きは一般の人にも悪い印象を与えますよね。
私は、労働運動をすることは労働者のためになることですから、良いことだと思うんです。ただ、労働運動を労働者の前に立ってするのであれば、せめてきちんとした服装でしなさいと言いたい。動画を見ていただいたら分かりますが、マスクにサングラスに帽子を被って、ジーンズに派手な上着の人やジャージの人もいます。見た目で判断してはいけませんが、これでは一体、何の集団なのか分からない。実は、そういう連中を排除するために自警団的な市民団体の方々がいるんですが、あまりにしつこく盗撮をしているので、その団体の人が注意をしに行ったら、逆に殴られたんです。既に被害届けも出して、いま捜査段階なんですが、変装しているから人物の特定が難しいんです。
先ほど「労働組合が悪いわけではない」という意味の言葉が出ましたが、健全な労使関係については、どのようにお考えですか。
労使協調という言葉がありますよね。労働者も使用者(経営者)側も協調するということですが、これが出来ていなかったら企業は繁栄できません。どちら側も一致団結しなかったら足し算にならんのですよ。みんなの力が結集して、その会社の力になる。それができなかったら会社は繁栄できない。会社が繁栄できなかったら、労働者の夢も希望も叶えられない、ということになりますよね。
私も会社を経営していますが、会社の基本というのは、使用者側の人間は仕事をしていただいている、という考えを忘れてはいけません。そして労働者側の人達も仕事をさせていただいているという、互いが互いの立場を尊重する意識がなかったら、良い意味の労使協調なんてできません。繁栄したいのであれば、労働者の方々を大切にして、みんながやる気を出してもらえるような環境をつくらないとだめです。
今は人手不足ということを聞くんですが、人材についてはどのようにお考えですか。
和歌山県においては、そんなに人手不足ではありません。でも出荷量の多い大阪や東京では、確実に人材が不足しています。でも、これも本来の意味での人材不足ではなく、使用者側の意に添う人材がいないということです。安い賃金で、長時間働いてくれる人が欲しい、という使用者側の勝手な思いも半分ぐらいは含まれているんじゃないかなと思います。でも、そういう考えの会社は繁栄しません。労働組合も連帯労組のように、とにかく組合員をその会社に入れたら、その会社を食いつぶすまで無理難題を言ってくるような、そういう労働組合ではいけません。
関西でもいくつかの労働組合がありますが、そこへ入ったら、組合は「組合ができたのですから、誠実に話し合って労働条件の改善に努めてください。もし組合員に改めるべき問題があれば、私たちも改善に努めます」と言う。これが本来のあり方だと思います。
それは、ほんとうに当たり前のことですが、先ほど理事長が言われたように、別の目的の下で動くからおかしなことになるんですね。
去年、私の会社が連帯労組に攻撃されたときのことなんですが、当社の従業員が運転する車を停車させ、その際に連帯労組の組合員が故意に車のボンネットに飛び乗って「車に轢かれた」と言いがかりをつけられたことがありました。連帯労組はこの事件を『殺人未遂』だと宣伝したんです。私はこのようなデタラメな宣伝に屈しない態度を貫きました。
そういう体制は変えていかないといけませんよね。
国の対策も不十分だと思いますよ。暴力団や『エセ』といわれる団体にはいろんな条例を使って規制をかけましたよね。だから最近は昔ほど見かけなくなりました。労働組合を名乗る団体であっても、法で許された権利を有する団体であればこそ、その活動が反社会的活動に類する場合は規制することが必要だと思います。でなければ、私たち事業主が健全な経営を行う権利が侵害されることになります。連帯労組もこうした事情をよく知っているからやりたい放題なんです。
法の抜け穴を利用して、うまくやっているということですね。
その通りです。ですから、労働者の立場に立って活動している労働組合と、労働組合を騙(かた)りながら法の抜け道を利用しながら荒稼ぎをするような団体と、大きく2つに分ける必要があると思うんです。でもはっきり言いまして、後者のように、労働組合のかたちを利用して活動をしているのは連帯労組だけです。
実は最近まで、業界に関わるいくつかの労働組合も連帯労組と共同体をつくっていました。昨年の連帯労組による業務妨害行為が原因で、この共同体は崩壊したと聞いています。労働組合から見ても、連帯労組の活動は常軌を逸しているとの判断がされたのだと思います。今まで連帯労組は正常な労働組合との共同体を『隠れ蓑』にしていましたが、これも通用しなくなりました。連帯労組はこの業界にいらない。私たちは一切、連帯労組に関わらない。この態度を貫くことで、必ず正常な結果が得られると確信しています。
そうならないと、労働組合のイメージダウンですよね。それでは最後に、和歌山県広域生コンクリート協同組合の今後の展望についてお聞かせください。
この恊組が設立されたのは2年前で、会員数も当初は四社でした。今は連帯労組対策も含め、事業主が健全な経営ができるよう、みんなの拠り所としていただきたいと思っています。当面二重加盟になりますが、自信を持って既存の各協同組合にも当広域協組に加盟を呼びかけていきたいと考えています。事業者も一致団結して連帯労組との関わりを絶ち、自分たちの力で和歌山県の生コン業界を正常に戻す。というのがいま最大の目標であり、やるべきことです。でも残念なことに、いま県内で南の方を除いて八つの協組があって、そのうちの六つは大同団結してくれたんですが、もともと連帯労組と連携していた二協組は参画してくれていないんです。過去に労働組合を利用して、事業者間で攻撃したりしていた所は、なかなか手を切れませんよね。たぶんそれが理由だと思いますが、私たちも無理強いはしていません。
なかなか一致団結するのは難しいですね。
もう大きく変わっていますよ。それとこれは今後の広域協組の展望にもからんでくるんですけど、今回この協組の理事の皆さんはみんな40代で、地域から選りすぐりの人材を起用しています。それで、今の時代を変えるのと同時に、次の時代を創る。
この協組が、その方たちのための勉強の場になれば良いなと思っています。協組の若返りですね(笑)。やっぱりこれからは若手の時代ですよ。