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近畿生コン関連協議会

特集

生コン業界の仕事や暮らしに役立つ情報をくわしく。

生コン業界の仕事や暮らしに役立つ情報をくわしく。

  1. 地域社会と、広域協組。

2018.12.07

地域社会と、広域協組。

ご訪問先
大阪広域生コンクリート協同組合 企画部・法務部

部長 小早川 清氏(写真右)・同課長 瀬山 宏氏(写真左)・雪本 清人氏(写真中)

社会貢献活動の基本は近江商人の〈三方良し〉

人は1人では生きていけない。企業や組織もいろんな人が関わりあって成立している。それが社会だ。「結」今回の巻頭特集は、大阪広域生コンクリート協同組合(以降、同協組)の社会貢献活動など(CSR=企業の社会的責任)を紹介する。取材にご協力いただいたのは、同協組企画部・法務部(以降、企画部)の皆さんだ。

同協組は、社会貢献活動にたいへん力を入れている。その理由は、私たちの仕事であるコンクリートという基礎資材が、地域社会の基盤づくりに大きく関わっているからだ。そしてその考え方のベースになっているのが、「結」創刊号で木村理事長が語っておられた〈三方良し〉の考え方だという。

「もともと協組内に〈三方良し〉の考え方がありますので、組織の規模にあわせた社会貢献をしなければならないということで、昔からやっていました」と語ってくれたのは、同部 部長の小早川清氏だ。

三方良しとは、近江商人が末長く商売を続けるために掲げた〈売り手よし、買い手よし、世間よし〉という精神のこと。近江の地(滋賀県)を出て諸国で商売をするには、私利私欲だけでなく、相手のこと、また相手の住む地域のことも考えなければ続けられないということを、彼らは経験上学んでいたのだろう。

CSRとは、三方良しを現代的に解釈したものだ。対象はステークホルダー(企業経営に関わる利害関係者)と言われ、従業員やその家族、消費者、株主、取引先、地域社会などだ。

皆さんから託された1m3×5円を役立てる

現在、同協組のCSR活動は、企画部が担当している。

活動の流れとしては、普段からさまざまな分野で社会貢献につながるテーマを探し、ふさわしいと判断したテーマを理事会や全社会に提案して、組織として承認いただくという流れだ。

同協組のCSR活動には、一般企業などにはない素晴らしい特長がある。それは、活動のベースとなる予算の組み方だ。

なんと生コン業界にふさわしく、年間出荷量(m3)×5円を役立てているのだ。ざっと計算すると年間出荷量が約700万m3とすると、700万×5円=3500万円と、非常に分かりやすい。

もちろん実際は、これだけでは足りない場合もあるのだが、これなら、誰もがその出処や全体像を容易に理解することができる。つまり、組合員の皆さんが、一生懸命働いていただいた生コンの1m3当たりについて5円を、使わせていただいている。皆さんからの気持ちを託されているのだ。企画部の皆さんは、常にこのことを心に留めながら、活動を推進している。なので、労働者の皆さんも、「社会貢献なんか、自分には関係ない」などと考えずに、社会の一員として、その活動内容や経緯、成果について興味をもっていただきたい。

未来の街を描こう!絵画コンクール

続いて、一つひとつの活動を紹介していこう。

まず同協組の代表的な活動と言える、〈未来の街を描こう!絵画コンクール〉について。

同協組のCSR活動の究極の目的は、未来の生コン業界を背負って立つ人材育成だ。その目的に対して、真正面から取り組んでいるのがこの活動と言える。

その考えから、子どもたちが未来の街を自由な発想で考え、描き、発表する場を設けるため、産経新聞社との共催で、このコンクールを2007年から12年にわたり実施している。展示会や表彰式を行うだけでなく、受賞作品は産経新聞に掲載され、実際に使われるミキサー車にプリントして、街中を走ることで活動の趣旨をアピールしている。

この活動については、「KURSレポート 第3回「第12 回未来の街を描こう! 絵画コンクール」表彰式」で詳しく紹介している。

過去の受賞作品をプリントしたミキサー車

インタビューを受ける受賞者

EXPO2025オフィシャルパートナー

いま最もタイムリーな活動と言えるのが、EXPO2025オフィシャルパートナーだ。

2025年に大阪・関西で開催される国際博覧会(万博)に、これまで大阪府や大阪市をはじめさまざまな団体が招致活動を行っており、同協組も2025日本万国博覧会招致委員会のオフィシャルパートナーとして、その招致活動に協力。開催決定後も、応援を続ける予定だ。

具体的な活動としては、EXPO2025オフィシャルパートナーステッカーをミキサー車に貼り、市内を走ることで招致活動のお手伝いをしていました。

EXPO2025オフィシャルパートナーのステッカー

EXPO2025オフィシャルパートナーのステッカーを貼ったミキサー車

防災活動への協力

非常時の対応として行っているのが、〈防災活動への協力〉だ。

同協組では、2006年に大阪府危機管理室と「災害発生時の水利確保に係る防災活動協力に関する協定」を締結。南海トラフ巨大地震など、大規模災害が発生した際に、組合員がミキサー車によって消防用水の輸送や貯水槽への充水を行うことで、防災活動に協力。自治体からの要請によって防災訓練を行っている。

レジリエンス認証

レジリエンスとは、復元力や病気などからの回復力、また強靭さなどの意味をもつことから、転じて南海トラフ巨大地震など、大規模災害が発生した際、事業を迅速に復旧させるための活動のことを指す。

同協組は、社会的責任としてこの活動に取り組み、災害時に組合員の安否確認をスムーズに行えるよう、管理システムを導入するなどの事業継続計画(BCP)を充実。また、この活動の一環として、政府の推進する国土強靭化大賞(ジャパン・レジリエンス・アワード)に応募、2018年3月20日、優秀賞を受賞した。

今後は、事業継続計画のさらなる充実を図り、内閣官房国土強靭化推進室公表のガイドラインに沿った〈レジリエンス認証〉の取得にも取り組んでいくという。

ジャパン・レジリエンス・アワードを受賞することで、レジリエンス認証に一歩近づいた。

寄付活動

同協組では、大阪府や兵庫県、社会福祉、児童福祉施設をはじめ、災害復興支援など、社会のため、社会で生きる人々と、子どもの未来のために寄付活動を積極的に行っている。

平成29年度、大阪府の福祉基金並びに大阪府防災基金に対して、地域社会と福祉事業への貢献が評価され、内閣府より紺綬褒章が授与された。

その他の活動

同協組のCSR活動には、他にも「工場見学や技術研修」、「SDD(ストップ・ドランク・ドライビング)」、「地域活動への支援」などがある。

さらに活動の裏には、プレッシャーや想定外のトラブル、厳しい現実との対峙がある。

特に寄付の場合は実際に施設まで足を運び、困っていること、必要なもの、これからやっていきたいこと、寄付金を何に使いたいかなど、置かれている現状を把握するため生の声を聞いて、寄付先を選定している。

組合員の皆さんから預かった、m3×5円という大切なお金を使わせてもらうという、重要な責務を果たすため理事会、全社会で報告し、承認を得たうえで実施している。

福祉の現場で働く人と、心を開いて話をすると、世の中の不条理や人の生死など、厳しい現実を垣間見ることもあるという。「重いテーマに対峙したときは気が滅入ることもありますけど、施設で育った人がミキサー車の運転手として働いている話などを聞くと、寄付がきっかけで、子供たちの夢や明るい未来へつながる、この素晴らしい活動を続けていきたい!」と、同部の前田氏は明るく語ってくれた。

このように、寄付活動をはじめ同協組のCSR活動は、対話や確認、寄り添いなど地道な作業も含めての活動となるのだ。

12年の看板企画を支える小早川氏の熱意

ここで、CSR活動の裏側をみていこう。

企画部が行うCSRの仕事は、新しいテーマを提案することだけではない。

例えば、何年も継続している既存の活動の、運営管理も重要でたいへんな仕事なのだ。ここでは、代表的な活動のひとつ、〈絵画コンクール〉について深掘りしてみたい。

絵画コンクールは、同協組で最も重要なCSR活動だという。その活動に初回から携わっているのが、企画部の部長を務める小早川清氏だ。

「平成17年に、生コンの品質保証宣言ということで、弊組合の生コンに〈コンクリード®〉というブランド名をつけて、それを宣伝する方法を考えるよう企画部に指示があったんです。で、業者さんと成功事例をさがすうちに、絵画コンクールを開催し、受賞作品を持って御堂筋パレードに参加し、名前を広めて売上げを伸ばした事例がありまして、ウチでもやってみよう!ということではじまりました」。

当初の目的はコンクリード®をアピールするための手段だった絵画コンクールだが、今回で第12回を迎えるまでに成長した。取り組みはまったくの素人からのスタートで、ここまでくるには、いろいろとご苦労があったようだ。

第1回目は告知が出来ていなかったから、締切り3日前までに80点しか作品が集まらず「このままでは審査会ができないのでは…」と心配していたところ、締切り3日前にまとめて100点が届きなんとか開催できたり、屋外の受賞作品貼付ミキサー車披露会に観客が集まらず、理事長が野良犬の前で挨拶をする羽目になったり、関東の学校から、毎年まったくテーマに関係ない作品が大量に送られてきたりと、苦労話やエピソードには困らない。

「何でも1回・2回は、勢いもあるし、なんとかなる。けど12回も続けられるのは、小早川さんの熱意や姿勢が反映されているからやと思う。作品は集まるか?良い絵はあるか?入賞者は当日来てくれるか?…とか、いろんな心配やプレッシャーを相当感じながらやっていると思う」と、同部の前田氏も感心する。

木村理事長も入っての診査風景。応募作品が多い時には朝から晩までかかることもあるという。

まさに小早川氏は、このイベントに全身全霊をかけていると言っても過言ではない。実は、イベント終了後に倒れてしまい、そのまま入院することもあった。一見、穏やかそうに見える小早川氏だが、実は熱い人なのだという。聞けば、第1回目には、念願の御堂筋パレードの面接で営業色を出しすぎて、審査に落ちてしまったという。熱心さゆえの残念なエピソードだ。

しかしこの様な小早川氏の頑張りがあるからこそ、12年も続くヒット企画に成長したのではないだろうか。当初は180点から始まった応募作品点数も、今回は1653点。これまで最高で2000点を超えたこともあったという。

参加者にプレゼントされるレプリカの額、キーホルダー、木製のミキサー車模型

こちらも参加者にプレゼントされるトートバッグ

親御さんの涙がスタッフの力になる

そんな小早川氏が、なぜここまで熱心になれるのかをうかがった。

「第1回の表彰式のとき、後ろから見ていると、1人のお爺さんが『今、表彰されているのはウチの孫ですねん。あんなりっぱに育ったんですわ』と、泣いて喜んでくれるんです。それを見て、スタッフ全員もらい泣きしました。で、これは絶対に続けなあかん!と思いました。やっぱり親御さんたちが喜んでくれるのを見るために頑張って続けています」。この活動は、毎年3月の産経新聞社との打ち合わせからはじめて、11月の表彰式まで、その間、ほぼ小早川氏が一人で進めているが、今では企画部の顔であり、1年でいちばん重要な行事だという。

同部の前田氏は「実は、協組内でもまだこの活動のことを知らない人もいるんですけど、表彰式を見て『ええことやってるんやなぁ…』って言われることもあります。もっとみんなに知ってほしいですね」と、この活動の魅力を語ってくれた。

受賞した作品は、産経新聞の朝刊にカラーで掲載される。これも参加者の喜びにつながる。

子供達の、業界の、社会の未来のために

子供の絵をサポートすることについては、企画部や小早川氏の熱い想いだけでなく、子供達に、少しでも生コン業界に興味を持ってもらいたいという、同協組の狙いがある。

「受賞した人の追跡調査をしたら、大阪芸術大学に進んで、画家の卵になっている人が2、3人いました(笑)。でもほんとうは、この子たちが社会に出る時、生コンに興味を持ってくれたり、ここから未来の業界を背負って立つ人材が出てきてもらうのが、僕の夢なんです」と、小早川氏も語る。

詳しくは次のページをご覧ください。

https://miraicon.jp/

子供達の夢は社会の未来そのもの。そんな子供たちの未来、生コン業界の未来、そして社会の未来、それぞれを重ね合わせるこの活動は、まさに三方良しの考え方に合致するものだ。

今後も同協組を代表するメインイベントとして、続けていってほしい。

このように同協組では、私たちの業界が地域社会の一員として少しでもお役に立てるよう、さまざまなCSR活動を行っている。

地道で大変な作業ではあるが、これからも皆さんから託された想いを、地域社会に伝えていっていただきたい。

取材にご協力いただいた大阪広域生コンクリート協同組合 企画部 部長の小早川清氏。

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