[続]偽装労組
偽りの連鎖が、今はじまる。
偽りの連鎖が、今はじまる。
2022.10.31
滋賀県内を舞台にした<全日本建設運輸連帯労働組合(連帯ユニオン)関西地区生コン支部>(以下、関生支部)による一連の威力業務妨害事件、恐喝事件について、2022年9月13日、大津地裁で、検察側が湯川裕司被告(現関生支部委員長)に懲役8年の実刑を求刑したことに対して、関生支部は同日、<殺人事件>なみの実刑判決を求めるのは組合活動の非合法化宣言ともいうべき異常なものだ、とする“検察の傲慢な挑戦状に対する”抗議声明を発表した(同支部機関紙「くさり」2022年10月10日)。
抗議声明によると、検察側の論告要旨は118ページにも及び、朗読は2度の休憩を挟んで3時間近くに及んだ。論告求刑公判で検察側は湯川被告に懲役8年の実刑を求刑したほか、城野正浩被告(執行委員・政策調査部長=当時)に懲役4年6月の実刑、萱原成樹被告(執行委員=当時)に懲役4年の実刑を求刑。山本智被告(特別対策係=当時)懲役3年6月、中村正晴被告(会計監査=当時)懲役2年6月、壱岐健一被告(新京都生コン分会員=当時)懲役1年6月を求刑した。
滋賀事件は、2018年7月から2019年8月にかけて、のべ39人の関生組合員と6人の生コン協同組合員らが10回に分けて逮捕されたもので、いずれもコンプライアンス活動に名を借りた威力業務妨害事件である。湯川被告の(株)タイヨー生コンに対する1,000万円の恐喝事件も対象になっている。
同抗議声明は、同年10月24日の最終弁論で「その誤りについて全面的に反論して無罪判決の獲得に全力をあげる」と述べている。判決は来年(2023年)3月2日に言い渡される予定だ。
この滋賀事件での関生支部の主張を覆したのが、前回(Vol.11)も紹介した、湯川被告と一心同体の関係にあった元関生支部幹部K氏が、2020年10月、中央労働委委員会に提出した<陳述書>だ。今回も引き続き、その内容を紹介したい。
ストライキと称して、大勢の組合員が身体を張って生コン出荷などの妨害・阻止したり、街宣車、ビラ配りなどの嫌がらせの街宣活動を行い、ターゲット会社に圧力をかけ、組合の要求を受け入れさせることを主な活動手段としてきたのが<関生支部の争対部>である。これをコンプラ活動と発案したのは、争対部の常任委員である湯川副委員長(当時)で、その指示を受けて最初に行うようになったのが他ならぬK氏だった。コンプラ活動の実態について前回紹介したが、その組織形態はこうなっていた。
争対部は、平成29(2017)年当時、湯川副委員長をトップとして、争議部長の西山直洋被告の下に、ブロック毎に班長が配置されていて、K氏は京津ブロックの班長をしていた。争対部のメンバーは、常時25人から30人いた。威力業務妨害や名誉毀損の罪に該当するような違法な活動をすることが多く、逮捕されるリスクが高いことから、メンバーに加入させる時には、西山争議部長が直接、個別面談をして、その覚悟があることを確認し、活動内容について守秘義務があることを誓約させていた。また、警察の捜査に備え、各メンバーの行動が分からないようにしておくため、行動予定等は名前ではなく、予め決めた番号をパソコンのキーボード等に記載していた。他方で争対部はいわば関生支部の花形部署であったところから、メンバーに誇りを持たせるため、関生支部のマーク等の入った黒いジャンパーとベストが配布されていた。このように、関生支部本体の争対部とは別に、各ブロック内でも争対部を組織。京津ブロックでは組合員20人以上を集めて争対部員とし、ブロック内の争議活動の要員としていた。
これらの組合員は、いずれも朝日分会の日々雇用労働者か、分会のある正社員だったが、正社員は各会社との間で、通常の有給休暇とは別に<組合活動休>として、分会活動毎に年60日の有給休暇をとることが可能との協定を交わしていたので、ブロック内の争対部メンバーを争議活動やコンプラ活動などに駆り出すことは容易だったという。関生支部の正組合員は、年60日間もの<有給休暇>が保障されるなど、驚くべき優遇、日々雇用の組合員との差別待遇を会社と<協定書>を締結し、実行していたのである。これでは労働者を守る組合ではなく、会社に囲われた労働組合ということになる。関生支部は<労働者の権利を守る>というが、これ一つをとっても嘘だということになる。しかも休暇中の正社員を、ターゲットとした会社のコンプラ活動の要員にしていたというのだから、まさに<労働組合>を騙る反社会的行為を常套手段とした<偽装労組>そのものではないか。
関生支部には、ターゲットとした会社の従業員をオルグ(※1)して組合員に加入させて、いわゆる<公然化>と呼ばれる、分会を立ち上げさせることなどを目的とする特別対策班、通称<特対>と呼ばれる組織があった。特対は、通常の組合員には知らされていない裏部隊であり、武委員長(当時)の下、湯川副委員長、城野執行委員を班長として、各ブロックから選抜されたメンバー30人余りで構成され、K氏もそのメンバーの1人だった。
特対では、3か月に1回位の割合で全体会議が開催され、武委員長から「君達は特別な任務を負っている」などと訓示があり、分会を立ち上げるべき会社ができると、そのブロックの会社のメンバーに対してターゲット会社が指示された。
※1.団体が組織を拡大するために、労働者などに対して勧誘活動を行い、構成員にする行為。
指示を受けたブロックのメンバーは、その会社の各労働者を尾行し、飲酒癖、素行、家族、借金の有無等を調べ、“落ちそうな労働者”を探し出して接触を始め、関生支部に加入するよう勧誘するのだ。これらの調査や勧誘にかかる費用については、湯川副委員長から、「資金はいくらでも準備するので、金に糸目をつけず、酒を飲ませるなどしてでもいいから組合に誘い入れてこい」、などと言われ、オルグ活動費として数百万円単位で費用を出してもらうことも可能だったという。こんな卑劣なことをやってきたわけだから、<権力>批判の資格などない。それでいて、今回の一連の<刑事事件>を<国家権力の弾圧>にすり替え、世間をだまし、<正義面(づら)>をしているというわけだから、その罪深さは底なしだ。ターゲット会社や、それぞれのブロックの活動状況は完全に秘密とされ、K氏も当時はどのブロックでどんな活動をしていたか、全くわからなかった。関生支部を脱退した後、平成26(2014)年から同27(2015)年にかけ、阪南ブロックの特対が、大阪協同リースという生コン輸送会社の日々雇用労働者(ミキサー運転手)5人をオルグして関生支部に加入させるという大きな成果を上げていたことがわかったという。
次号も引き続き、<陳述書>の内容を紹介する。